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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
バンドやろうぜ(後)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

 そして、一回目の練習日が来た。
「へえ、良いところじゃないか」
「思ったより広いね」
イタリアの貸しスタジオに4人が集った。
「さあ、始めるぜ」
日向は既にギターのチューニングを終えていた。
「あれ小次郎、どうしたの、カッコイイじゃない」
あの日以来、岬にはトゲがある。しかも、隠そうともしない。スーパークールな視線に射抜かれて、日向の言葉は発せられることもなかった。
「岬は練習してきたのかよ?」
「もちろん。ナポレオンがギター弾くから、セッションとかしたよ」
何やらカッコイイことを言う岬に、キーボードの鍵盤の細さに苦労した若林と、翼が羨望の眼差しを向ける。
「じゃあ、練習始めるか」

 前奏はギターのソロから始まる。メロディを一通りさらった後、キーボードとベースが加わり、1メロへ。

「ちょっと待てーッ!」
翼が歌い出したところで、日向がストップをかけた。
「何だ、その歌は!」
変声期前のボーイソプラノさながらの裏声で朗々と歌う翼は、何が悪いのかという顔をしている。
「この歌はロックなんだぞ。いきなり裏声でどうする!」
「こんな高い音出ないよ!」
小学生の頃、その幼い高い声で、日向を散々苛立たせたことなど忘れたように、翼が喚く。確かに声が高いのと音域が高いのとは同じではないにしても。
「マジかよ!?」
相変わらずの苛立ちを隠そうともせずに、今度は日向が喚いた。
「じゃあ、サビのとこ歌ってみろよ」
それなりに有名なサビなら、と思った日向の思いはまたも裏切られた。聞き慣れたメロディだけに、違いは明らかで。
「なにィ!」
とりあえず叫んではみたものの、危機的状況を伝えたい二人は、呑気に音合わせをしている。
「そこの二人!」
指差されて、二人が顔を上げたところで、日向が1フレーズ弾く。
「歌ええええ!!」
尋常ならざる日向の気迫に押されて、二人はメロディを聞いている。有名なサビの部分、二人は首を傾げ・・・
「フフンフフーン」
「ラララララーラ」
「お前ら~っ!」
怒り心頭に発した日向が唸る。ただ、それで怯む相手ではない。
「だって、僕ベースだもん」
「そして俺はキーボード」
二人は自分の楽器についてかなり練習をした。前奏までの部分では二人とも問題なく演奏できていた。突貫としてはまずまずの出来といっても良い。
「こんなに有名な曲だぞ」
「でも僕、中学からずっとフランスだし」
「俺はドイツにいたからな。まったく知らん」
しかし、中学時代海外にいた二人は、曲自体知らなかった。
「まあ良い。じゃあ、お前らコーラスな」
言い放つと、日向はその一節を音に乗せた。得意教科音楽、と言うだけのことはあり、原曲が分かる。元々好きな曲で、歌も練習していたに違いない。ただボーカルをさせてくれとは自分からは言えなかったのだろう、と二人は邪推した。
「・・・最初からそうすれば良いのに」
コーラスに入る前のセリフは見事にハモった。

「それで、翼くんは何してもらうの?」
突き放すようなことを口にしながらも、その実、面倒見の良い岬が尋ねる。
「俺、テルミン持って来たぞ」
トランクをゴソゴソする若林を見ないふりをする岬に、日向がまた目くじらを立てる。
「お前、何とかしろよ」
「テルミンは置いて来てって言ったんだけど」
「止めるなら最後まで責任持てよ」
テルミンの用意に余念がない若林から目を逸らし、岬はスタジオを見渡した。後ろに陣取るドラムセットに目を留める。
「どうせだし、翼くんがドラムやれば良いんじゃない?」
「はあ~っ!?」
さっきの歌に、リズム感のかけらも感じなかった日向が目を剥く。気の弱い選手ならばそれだけで気を失いそうな殺人的視線を、平然とやり過ごして、岬は翼をドラムセットに座らせると、自分はベースを構えて、指をあてる。
「翼くん、僕に合わせて、これ叩いて」
「うん」
最初は恐々叩いていた翼のスティックがすぐに華麗に舞う。二人のリズムは即席と思えぬほど見事に調和していた。恐るべし、黄金コンビ。そんなことまでできるのか、黄金コンビ。すごいぞ、黄金コンビ!とかつて二人に対峙した二人は戦慄した。

「よし、これでいけそうだな!」
当初の予定とは大きく異なるが、何とか形になりそうだ、と日向は思った。むしろここまでできるとは思ってもみなかった。元々何事にも器用な岬はあてにしていたが、他二名は数にも入れていなかった。だが、若林はキーボードもさることながら、コーラスが予想外に良い。
「若林くんの声って、かっこいいよね。岬くん、そう思わない?」
分かって言っているのかどうなのか、翼に同意を求められた岬が小さい声で「うん」と言うのを、日向は冷ややかに眺めた。自分に対する辛辣さの半分でもあいつらに向ければ良いのに、とぼやいていると、岬に(一応)褒められて嬉しいのか若林がニヤニヤとしている。
「まあ、俺は詩吟もたしなんでいるからな」
またバンドとは違う方向の特技が出た。複雑な表情のポーカーフェイスで堪える岬に、だからさっさと猫かぶりをやめろよ、と日向は独りごちた。


 色々な意味で準備万端で臨んだワールドカップ予選であったが、招聘されたのは結局若林一人だった。他三人はワールドカップ出場が決まった時のために温存されたのである。
 合流の日の「出し物」はテルミン独奏会となり、修哲勢は喜んだが、許可を与えた三杉は深く深く後悔した。


(おわり)

拍手ありがとうございます。
GC月間記念・・・のはず。
すみません、勢いで書きました。自分的欧州メンバーな4人組。好きなんです。
若林くんの意外な特技シリーズ、壊れている岬くんを書くのが楽しかったです。
どうせバンドなら、南葛高校文化祭のバンドを書こうと思っていたのに、なぜこうなった。
連休取れなかったので、日曜日に更新。次は30日木曜の予定。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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