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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
バンドやろうぜ(前)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

「はあ~っ?」
日向小次郎の突然の台詞、しかも高校生か、とツッコミを入れてしまいそうな一言に、若林と岬が同時に疑問を投げかけ、それから岬は同時だったことに気付いて、恥ずかしそうに少し視線を逸らした。
 今更だろお前、リアクションの間が揃って来てんぞ。第一お前ら今日も一緒に来たくせに。心の中でのツッコミもほどほどに、日向は再度繰り返した。
「なあ、翼バンドやろうぜ」
「え、何で?」
相手になろうとしない若林と、まだ恥ずかしがっているのか黙ったままの岬は放置して、日向が狙いを定めたのは翼だった。そして読みは当たり、翼は当然のように聞き返した。
「今度のワールドカップ予選、俺達招集されそうだろ?今回は初めての連中も多いから、お披露目代わりに、な」
何のお披露目だよ、わざわざ日本まで恥かきに帰る気?と岬がスーパークールに呟く。翼と若林が顔を見合わせたのを見て、日向は岬の耳元に内緒話を仕掛けた。
「良いのかよ岬?」
「何が?」
「お前、あいつらの前じゃ猫かぶってんじゃねえのか?ビックリしてんぞ」
日向相手だとついツッコミを入れてしまう岬だが、そういう岬をあまり知らない二人組は驚いたように顔を見合わせている。まあ、岬ファンの二人のこと、冷静な岬くんもカッコイイとかクールぶる岬も可愛らしいとか、そんなことしか言っていないのだが。
「そんなことないよ。小次郎が世話かけさせるからだけの話じゃない?」
相変わらず、人当たりの良さを前面に出した笑顔でさらりと言う。優しい顔立ちの岬のこと、ひどいことを言われている日向の方がどう見ても加害者である。
「日向くん、岬くんをいじめちゃダメだよ」
「翼、お前の目は節穴かっ!」
だから南葛の奴らは嫌いなんだ、とひとりごち、日向はパンフレットと手書きのメモを取り出す。
「まあ、この面子だから出来栄えには期待してねえ。だが、新しく代表入りした連中の緊張をほぐし、良いチームにするには音楽の力は必要だ」
普通にサッカーした方が良いんじゃない?新しいチームなど珍しくも何ともない岬が呟く。
 だが、他の二人は違っていた。中学時代、悪役を買って出て大変だった若林に、途中参加問題でもめた翼。更に、二人とも有名すぎて、新しいメンバーにはたいてい緊張され、敬語を使われ・・・愉快ではない目に遭っていた。
「分かる!分かるよ、日向くん!」
叫んだ翼に、岬が頭を抱えた。止めてくれることを期待して若林を振り返っても、若林は日向の持って来たパンフレットに釘付けである。開いているページは・・
「もしかして、そのステージ衣装着る気?」
タイトなジャケットに、同じく細身のパンツ。鎖や飾りをジャラジャラ付けた、ロッカーというよりアイドルのような衣装である。
「まさか」
顔を上げた若林は、いかにも心外という表情で岬は安堵する。だが、その一秒後に視線を落とした若林は弾む声で告げる。
「もちろんお前の衣装だからな」
「何それ・・・」
衣装と岬の顔を見比べ、口元をニヤつかせる様子に、岬はぷいと向きを変える。こうなると、若林も当てにならない。むしろ推進派にくら替えしている可能性が高い。
「大体、このメンバーでバンドって、何するんだよ。小次郎は何か楽器できるの?」
だから作戦を変えてみた。
「俺はギターやったことあるぞ」
しかし返って来たのは予想外の答えだった。ギターを出して来た日向に、用意までしていたのかと岬は呆れたが、問題ない、ストッパーは別にいるのだ。
「俺は楽器って触ったことないなー。音楽の授業でもリコーダが吹けなくて怒られてたよ」
反対に、翼の答えは残念ながら予想を裏切らない。最初から無理なのは本人含め全員が分かっていた。
「じゃあ、お前は歌を歌え」
しかし日向は胸を張って断言し、岬を更にげんなりとさせた。この中で翼と同級生だったことがあるのは岬だけだ。体育と語学以外は惨憺たる有様の翼の成績の中でも、音楽は更にレベルが違った。
「あのさ・・・」
説得の方法を間違えた。できるか、ではなく無理だというように話を持っていかなければ。岬は何故か酷くなる頭痛を堪えて考える。
「そういうのって三杉くんの許可要るんじゃない?」
選手兼コーチのポジションが定着した三杉は、合宿所の管理も任されている。騒いだり、器物を破壊したり、門限を破ったりすると、食事当番やトイレ掃除を課せられる、東邦学園並の厳しさであり、この四人中三人が罰当番を経験済である。
「大丈夫だ。今メールしておいた。翼の歌が楽しみだとさ」
即答したのは若林である。普段遊びに行く時並の段取りで、許可まで勝ち得ている。普段は頼りになる恋人の甲斐性に苛立ちながら、岬は頭を捻る。
「そういえば、若林くんは何か楽器できるの?」
昔バイオリンを習っていたと聞いている。だが、今回はあくまでバンドである。
「そうだな、俺はバイオリンと琴とピアノと和太鼓ならできる。後はテルミンぐらいか・・・」
案の定予想の外を行く若林に岬がため息をつく。本当にどんなバンドなんだよ。
「岬、そこでツッコミ入れねえから、猫かぶってるって言うんじゃねえか」
はいはい、分かったよ。日向の指摘を聞き流し、それから岬は改めて切り出す。
「とりあえず、僕はやらないから。悪いけど三人でやってよ」
それしか、自分の身を守る方法はないらしい。他の二人ではなく、あえて日向のみと視線を合わせて言い切る。
「ええっと、翼がボーカルで若林がキーボード、となると、岬がドラムか・・・」
「って話聞けよっ!」
さすがに聞き流せず、声を荒げた岬に、三人が不思議そうな顔を向けた。

「ねえ、岬くんもバンドやろうよ」
「やらない」
「ドラムセット、どれにする?」
「だから、やらないって」
「お前がいないと、こいつらのコントロールは無理だからよぉ」
「何だよ、それ」
岬とて、音楽は嫌いではない。余裕があれば音楽もしたい気持ちはない訳ではなかった。ただ、ここに来てから、その関心も擦り減っていくのを感じた。少なくともこのメンバーでは嫌だ。
「絶対いやだからね。良いじゃない、トリオで」
一方で、三人が三人とも岬を必要としているのは感じていた。岬がいないとバンド以前にチームとして成り立たないことも。
「・・・ドラムスなんて大げさなのはちょっと」
仕方ないこととはいえ。10分後譲歩してしまった自分に、相変わらず甘いな、とため息をついた。


 それからの打ち合わせで、週1回集い、日向の借りたスタジオで練習を行い、それ以外の日は渡されたコピー曲のCDと楽譜を元に各自で練習することになった。岬は結局ベースを選び、日向には渋いと言われ、派手な衣装を用意しようとしていた若林にはガッカリされた。

(つづく)

拍手ありがとうございます。
盛夏アップした直後から寒くなって来ました。ひどい。
そして、また連休なしの日々です。連休何それ美味しいの?

GC月間ですので、一応翼くんの出るものを書いてみました。
・・・なぜ、こうなったのでしょう。後篇につづく。

以下、拍手お礼
snow様、いつもありがとうございます。
汗をかいている岬くん、間違いなく色っぽいですよね。それを描写しきれていないのが問題ですが。
源岬分、こちらこそ補充させていただきに参ります♪

拍手のみの方もありがとうございました。励みになります。
あと、目次更新しました。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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