※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 練習を終えて家に帰ると、手紙が来ていた。修哲のみんな連名の手紙は相変わらずで、みんな元気で頑張っているのが目に見えるようだった。 ひとしきり笑った後の追伸には、懐かしい写真を見つけたので同封します、と森崎らしい几帳面な字で書かれていた。いつものように取り出しにくい程詰め込まれた封筒から取り出した写真の中には、確かに懐かしい写真が混じっていた。 いつもの仲間に、南葛の連中も混じって写っている。石崎の猿顔は今もそのままだが、小学生時代の翼はとにかく小さくて、最初に対戦した時も、ちょこちょこと動いてくれたものだと思い出す。 笑いながらめくった次の写真に、思わず手が止まった。決勝戦の直後の場面、俺の隣で笑っているのは、岬だった。
こっちに来た時には、思い出す余裕もなかった。 少し余裕が出て、新しい環境に慣れることの大変さを客観視できるようになると、時々故郷を思い出すこともあった。日本のみんなと手紙を交わすようになってからはその機会も増えた。
冷たいものだ、と我ながら呆れる。ごく淡いものだったが、あれは多分初恋だった。
写真を見つめる。そうだ、こんな顔だった。誰もが母親似だと確信し、口に出さないでいた可愛らしい顔立ち、その割に雰囲気だけ大人びていた。何処を見ているのか、それとも見ていないのか、しばしば遠い目をしていた。
「どうした?」 一度尋ねたことがある。練習中に足を留め、グラウンドを眺めていた岬は、俺に答えるというよりは呟くように言った。 「ふふ。あんまり楽しくて幸せだから・・夢じゃないよね?」 その時の笑顔が少し苦く思えたのは何故だったのか。
気になって仕方なかった。自分は周囲とは違う、と知っていて、でも同じでありたいと願う矛盾が、明るく笑う顔に影を落とし、それを儚く彩っていた。
そのくせ、岬は時々びっくりする程幼い顔をしている時があった。翼とボールを追い、駆ける岬が笑う。夢見るような微笑みは岬に似合っていて、いつもそんな顔をしてくれていることを願った。 今では、あいつの寂しさも意地っ張りも分かる。あの時は気付いてはいたが、分かっていたとは言えない。あいつがそれを微笑みの下に隠していたことも。
嘘つきで強がりの天使め。
でも、岬のことを思い出すと胸の奥に、何か暖かいものが満ちる。じっとしていられなくなる。普段は忘れていても、思い出した途端に、溢れる気持ちは何と呼んだら正しいのだろう。
たった一枚きりの写真をボードに留めて、残りの写真を片付けようとする。学生服の奴らは、記憶に残る面影を留めながらも、年々変わっていく。翼なんか、図体も態度も大きい、と井沢が零してくる位だ。そういう井沢も、中学で更にもてまくっていると高杉の愚痴の対象になっている。
・・・岬も変わっているのだろうか。
何となく想像できなかった。思えば岬はどこか現実感が薄かった。住んでいる場所も父親の顔まで知っていても、何故か現実感が乏しくて、普通に暮らしている様子が想像できなかった。
案外、父親似になっていたりしてな。
突拍子もないことを思いつき、だが想像できないことに気付く。
いつかは会えるのだろうか。岬のことだから、思ってもみない場所にひょっこり現れたりしそうだ。それこそ、南葛の道で初めて出逢った時のように。
あいつは今どこにいる?
そして、もし会えたら、俺はどうするんだろう?
その時は知らなかったのだ。間もなく、背が伸びてもやっぱりきれいで、天使な岬の来襲を受けるとは。もう一度一目惚れするとは。
ただ、その時は予感だけあったのだ。必ずまた会える、と。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 萌えは突然に、というのを書きたかっただけなのですが、謎の話に。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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