※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 短めです。次回長いので。 3
三杉が人の部屋に戻ると、翼が待っていた。 「岬くん、待ってたんだよ!」 「ごめんね、翼くん。早く行こう」 普段より少し快活に話す。翼を長く見ていた三杉は、いつも翼の隣にいる岬の口調も把握している。 「さあ、行こう!」 腕を引っ張られる。翼の嬉しそうな様子に、心が弾むが、その奥底には苦い感情がある。これは、所詮岬に向けられた笑顔なのだ。翼の手が握っているのは、岬の腕。
グラウンドには、人が集まり始めていた。その中でも、黄金コンビは常に注目の的だ。簡単なアップの後、パス練習をする。
誰よりも黄金コンビを知っているのは自分だと三杉は自負している。翼がパスを出すタイミング、岬の目配せ、合図、おまじないに頼るまでもなく、ずっと頭の中でトレース出来ていた。 そのシミュレーションの通りに、体は動く。俊足で翼に走り負けない岬の脚は、三杉の思うように、翼のパスを受ける。鋭いパスを出す。まるで、羽が生えたかのようだ、と三杉は思った。こんなに軽い体を知らない。
だが、走り出して間もなく、翼は言ったのだ。 「やめよう、三杉くん」 はっきりとそう発した翼に、三杉は背に冷たいものを感じた。決して走り疲れての汗ではない。 「翼くん、何を言って・・・」 めったにないことであるが、焦る三杉に、翼はまっすぐな目を向けた。 「岬くんのパスじゃないんだよ。三杉くんのパスだった」
「おい、どうしたんだ?」 立ち止まった黄金コンビに、他の者が怪訝そうに集まる。いつもこんな時に事態を収拾するのはコーチの三杉だが、調子が悪いため、練習を休んでいる。だから、代表して声をかけたのは松山だった。 「何か調子が合わないらしい。お前ら、ちょっと来い」 横から口を出した若林に、翼はすぐに、岬?は不承不承、頷いた。黄金コンビとは小学生時代以来の付き合いである、実力者の若林が仲裁したことで、集まって来ていた他の連中は散った。 「じゃあ、若林頼んだぞ」 松山もそう言って、DFのラインに戻る。若林は二人を伴って、ゴールの後ろ側に向かった。
「翼も、気付いたんだな?」 若林の言葉に、翼は何を、とは尋かずに頷いた。そして、辺りを見渡す。 「岬くんは?」 「胸押さえて寝てる」 冷気まで感じさせる口調には、若林の怒りが籠っている。練習に出ると言って聞かなかったが、無理やり休ませて良かったと実感する。 「三杉くん、何があったか聞いても良い?」 翼はゆっくりと口を開いた。普段と変わらない口調だけに、笑っていない目が際立つ。
翼は俺ほど寛容じゃないぞ。
若林の言葉が三杉の脳裏を過る。若林と岬も久しぶりだが、翼と岬が会うのは更にスパンが開いている。岬と走るのを楽しみにしていた翼は、寛容とは程遠かった。
敗北した三杉は、明日までに元に戻すことを約束させられた。
(つづく)
拍手ありがとうございます。 GC月間なので、このパートまで上げました。 でも、これまで翼くんよりも三杉くんの方がよく書いています。 ・・・というか、翼くんの出てくる話をあまり書いた覚えがありません。 上手く書けた覚えは更にありません。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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