※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 1
目を覚ました岬は何やら違和感を覚えながらも、その正体が分からず、目をこすった。外はもう明るくなっており、薄いカーテン越しでも、朝の光がまぶしい。辺りを見渡し、そして、隣のベッドに寝ている相手に気づく。 「おはよう」 試しに声をかけてみて、相手がもぞもぞと動くのを見る。 「寒・・・ねえ、若林くんそっち行っても良い?」 「岬、おはよう。・・・風邪引いたか?声おかしいぞ」 確かに、自分でもそう思った。首を傾げながらも、岬は身を起こそうとし、それから更に気づく。 「ん・・…何か胸が痛い・・」 「大丈夫か?」 素早くベッドから下りて、駆け寄ってくる若林に、岬はふと考える。
ここは何処だろう?
若林のゴージャス極まりない、キングサイズのベッドではない以上、ドイツの若林の部屋ではない。 また、慎ましいというよりは、侘しい煎餅布団でもないので、岬自身のアパートでもない。
大体、そのどちらであっても、二人でバラバラに眠ることなどない。恋人になってからというもの、若林が離してくれたことなどないのだ。
それから、合宿に来ていることを思い出した。だが、岬が若林と同室になったことはない。今回も岬の同室は翼だった。
岬が考えを巡らしている数秒間に、若林はウキウキと岬の布団を捲り、息を飲んだ。そこにいたのは、三杉だった。
「三杉・・」 若林の発した言葉に、岬は意味が分からず、廊下に面したガラスを見る。若林の手前にいるのは? 「三杉くん!?」 思わず口を押さえ、岬はその声を発した自分の姿をガラスで確認してしまった。それはまさに、三杉の姿だった。
「何が起こったんだろ・・」 艶のある髪をかき上げる、非の打ち所のない白皙の美青年。三杉の顔はしているものの、柔和な雰囲気に、優しげな表情のせいで、若林は一瞬目を奪われた。 同室の三杉が着替えていようが、風呂で会おうが、気になったことはない。いくら整っていても、眺めが良くても、ああ三杉だと思うだけだ。それが、今日はつい目を奪われてしまう。 「なあ、岬」 目の前の三杉は、中身は岬で間違いないと若林は確信していた。起き抜けの会話の時も、岬だと思って疑わなかった。口調も間も、そして、身に纏う雰囲気も、見上げてくる時のまっすぐで、きらきら輝く瞳も、若林の好きな岬だった。 不安そうに竦められている肩に触れたい気持ちはあった。その手を何とか引っ込めて、若林は切り出した。 「翼の部屋も確かめてみないか?」 「・・・うん」
翼の部屋は岬の本来の割り当てである。ポジションが同じなのと、翼の希望でコンビを組む岬はいつも同室だった。その部屋を目指しながら、岬は胸が締め付けられるような感覚がした。 「・・この痛み、もしかして心臓病なの??・・」 胸を押さえ、壁にもたれて呟く岬に、若林は手を伸ばしかけ、断念する。このまま触れたら、岬が怒るのは目に見えていた。
二つ隣の部屋の扉は鍵がかかっていなかった。いつも開けっぱなしにする翼の悪癖に今回ばかりは感謝して、岬はそっとドアを開いた。 「!」 翼と一つのベッドで眠っているのは岬。正確には、岬の姿をし、口元をほころばせた何か、だった。岬は息を飲み、若林に手を伸ばしかけて、断念した。
「間違いなく三杉だな」 一旦部屋を出た岬に、若林が呟く。岬も首肯し、腕を組んだ。 「恐らく、翼とコンビを組んで、同室になりたかった三杉が、何かやらかして、お前と入れ替わったんだろ」 若林の、いかにも気が入らない「何かやらかして」に、岬は笑いそうになりつつ、腕を組み直す。 「僕も、そう思う」 静かに話す様子は元の三杉とそう変わりなく見える。ただ、二人でいる時のように流れてくる視線の甘さに心がかき乱されるだけで。 「三杉くんが起きたら、話すよ」 痛むのは胸。苦しいのは、胸?
(つづく)
拍手ありがとうございます。 ちょっと九州まで行っていました。次藤さんには会えませんでした。 今日は入れ替わりネタです。結構好物です。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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