※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「もう、何してるのさ」 不意に視線を感じて、岬は振り返った。携帯を構えていた若林は悪びれた様子もなく、表情を緩ませる。 岬自身とは違い、柔和、とは縁のない男の中の男といった風貌の若林だが、表情を緩ませると、妙に人懐こく見える。それが岬には不思議であり、秘かに気に入ってもいる。 「岬撮ってんの」 かと言って、笑顔で懐柔される訳にもいかない。 「もう、やめてよ」 肘を立てたまま、上目遣いに軽く睨む岬に、若林が不満げに携帯を下ろす。 「だって、なかなか会えないだろ?」 お互いのオフが重なって、時間に余裕があって、というのは相当厳しい条件だ。お互いの道を歩いているとは言っても、やはり会えば離れられない。求め合って、腕を絡め合って、互いの体温に溶け合う。 「そう言って、前も撮ったじゃない」 向けられたカメラの前で笑うのは虚しい。それよりは、若林の笑顔を脳裏に焼き付けてしまいたい。・・・忘れられなくなる程に。 岬は隣に寝そべる若林の腕に潜り込んだ。二人で抱き合った余韻を残し、まだ暖かい腕に手を回す。 「嫌なのか?」 「恥ずかしいよ」 可愛らしいとか綺麗だと表現される顔をしていても、岬は男だし、男としての自負は人一倍強い。 「でも岬の画像欲しいんだよな。寂しい時に見たいし」 「前にも撮ったのに?」 強く見えるだけでなく、本当に強い若林であるが、寂しい時があるのは事実だろう。岬にしても、みんなで撮った写真、を携帯に隠し持っている。これが若林ひとりの画像ではないのは、やはり恥ずかしいからなのだが。 「今の岬が良いんだ」 そう言って手を取られた。いつもながらに、強い高い体温に触れるだけで、一瞬にして自分の体温までが上がるのを感じ、岬は唇を結ぶ。 恋の勝負は好きになった方が負けだと、今の岬は分かっている。そして、ずっと敵わない。 「もう可愛くないよ。君が言うみたいには」 口だけで突き放しても、絡められた腕は離せない。 「俺には可愛く見えるけどな。初めて会った時よりも」 「えっ?」 岬が絶句した瞬間に、若林の携帯が光った。フィールド並の素早い攻撃に、岬は若林を睨みつけた。 「こうなったら、若林くんの写真も撮るんだから」 携帯に手を伸ばそうとする岬だったが、振り返った若林が笑っていることに気づいて、手を止める。 「ついでに飾ってくれよな」 「じゃあ、ニヤニヤするのやめてよ」 そうは言いながらも、レンズ越しにまっすぐに見つめてくる眼差しに、岬は意識して見ないようにする。
飾れる訳がない。
きっと見る度に、この時の幸せな気持ちを思い出すから。甘くて泣きそうで、じれったくて手放したくない時間を。
「ん?どうした?」 不意に隣に潜り込んで来た岬に、若林はそれでも微笑みながら腕を広げた。厚い胸に抱き込みながら、柔らかい髪を指で梳く。 「もう少しくっついておこうかな、と思って」 「そうだな」 小さく、呟くような岬の言葉に、若林は口元をほころばせた。 恥ずかしそうに睨んだり、照れて微笑んだり、携帯を手に顔を赤くしたり、甘えて擦り寄ってきたり。岬は昔に比べてずっと表情豊かになった。それを可愛いと表現されるのは不本意そうだが、自分に心を許してくれていると思うだけで、胸が暖かく満たされる。これは岬に会うまでは知らない感情だった。 珍しく首にまわされた腕に、少し窮屈ではあるが、幸せを満喫する若林であった。
(おわり)
二人にただのんびりしてもらいました。
スポンサーサイト
テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
|