※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 こっそり更新 岬の荷物の中から転げ落ちたペンを拾う。 「友達の応援に行くって言ったら、持たされちゃって」 苦笑いの岬が手にしているのは、フェイスペイント用のペンらしい。確かに、熱狂的なサポーターには多いが、日本人の俺には少し難度が高い。俺の言葉に、岬もうんうんと頷いてみせる。 「でも、日本人学校の友達なんかは本当に平気みたい。だからよくペイントを頼まれるんだ」 そう締め括られるのは、絵の得意な岬らしい。 確かに、チームのシンボルマークやフラッグならともかく、それ以上に複雑な図柄は腕が要りそうだ。 「じゃあ、せっかくだから、何か描いてくれよ」 隣に座って、自分の頬を指差した。
一瞬大きく目を見開いた後、明るい声を立てて、岬が笑う。
こんなことくらいで、そんな柄にもないことを言う位舞い上がってしまうんだから、恋する男は他愛がない。
「若林くんがそんなことを言うなんて思わなかった」 岬はまだ笑い足りなさそうな口調で呟くと、俺を見た。 「良いよ。何にする?」 目の前で岬が微笑む。白い手が頬に触れて、あまりの近さに俺の方がドキッとした。 滑らかな指先の感触を楽しむように目を閉じる。すぐ側に岬の息遣いが聞こえ、目をつぶらなければ良かったと思った。
好きだとは言った。それ以上踏み込めなくて、俺達の関係は友達のままだ。
岬は多分、俺のことを好いてくれている。岬は賢い奴だから、その気もないのに期待を持たせることはしないだろうし、ヒマでもない。 会いに来てくれることで膨れ上がった期待は、それ以上踏み込む勇気を失わせた。嫌われる位なら、今のまま側で笑ってくれる方が良い。
「はい、描いたよ」 言葉と同時に、目を見開いた。電気の眩しさに目を背け、俺の顔を覗き込む岬と目が合った。岬はすぐに離れ、それから岬は何だか赤くなって見える自分の頬を押さえた。 「急にごめん。・・・ビックリさせたか?」 「あ、大丈夫・・・」 小さな声で答えて、岬は背を向けた。 「顔、洗ってくる」
岬の足音が遠ざかっていくのを聞きながら、洗面台の鏡が使えないことに気づいた。仕方なく机の上のスタンドミラーに手を伸ばし、それから洗面台に向かった。
顔を洗い、タオルを使っている岬を、後ろからそっと抱きしめた。 「わっ」 驚いて声をあげる岬を、鏡の中、覗き込む。タオルで顔を隠そうとしたが、その手を掴んだ。 「俺の方がびっくりしただろ」 俺の頬に鮮やかに描かれたハンブルガーSVのマークの隣には、「スキ」の文字が並んでいた。 「・・・ごめん」 顔を洗ったのに、さっきより赤くなった岬が細い声で謝る。 「嬉しいぜ」 そのまま抱きついた俺に、岬は耳まで真っ赤で、鏡に映った文字より、更にはっきりと岬の気持ちを表していた。
(おわり)
お久しぶりです。 生存証明代わりに更新しておきます。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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