※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 3
「11番チェックだ!パスを出させるな」 その言葉を若林が何度口にしたことか。 ”将軍”ピエールが猛マークに遭うことを想定して、PSGは岬をゲームメーカーにおいた。評価は高いが実績はまだ乏しい岬の起用は、交流戦ならではといえた。 反してハンブルガーSVでは、カルツがピエールをマークすることにしていたが、他の選手にはそれほどのマークは必要ないという評価だった。それは今までは正当な評価だった。ピエール以外にラインを通す岬や、シュート力の高いナポレオンが入るまでは。 「これはまずいな・・」 「・・・ああ」 コーナーキックを蹴ると言い出したカルツが、ボールを受け取りざまに呟く。交流戦で勝ち越しているハンブルクとしては、この展開は予想外だった。 「だが一点もやらん」 若林は汗ばんだ手袋を直す。今のところ、お互い得点はなし。攻撃力は互角でも防御力はこちらが勝る。 「それでこそゲンさん」
結局両チーム無得点のまま試合は終わった。 得点を許さなかったことで若林の無失点記録は伸びたし、引き分けたことでゲームメーカーとしての岬は評価を受けるだろう。 お互いにとって、最も穏当な結果に終わったことを安堵しながら、若林は思わずにはいられない。本気だと言いながら、岬は完全に牙を剥いた訳ではなかった。 ヨーロッパのクラブチームには、その頂点を争うヨーロッパリーグがある。若林の属するハンブルガーSVも岬のPSGも、そして大空翼のバルサもそれを目指す。 そのために手の内を隠す辺り、闘志は隠せていない。 もっとも、若林とてそれは同じことだ。 それでも、試合が終わるなり、岬は握手を求めて来た。試合中の凛々しさをまだ残した表情に、若林は眩しそうに目を細めながらも、細い手を握る。 「今晩8時な」 別れ際に囁いた若林に、岬は少しだけ顔を赤くして、素早く背を向けた。遠ざかる背中はいかにも華奢で名残惜しさが増した。
家に着き、後ろ手にドアを閉めるなり、せわしく抱きしめてくる若林に、岬は少しだけ抗った。 昼には敵味方だった。この逞しい腕は、何とも憎らしい鉄壁のGKで、その壁を打ち破ることはできなかった。 「岬?」 不意にその腕の力が強くなる。何事かと岬が動きを止める間に、執拗に髪を嗅がれる。 「どうしたの、若林くん?」 髪、首筋、と顔を埋めて嗅ぐ若林に、岬は困惑した。 「・・・香水の匂いがする」 恨みがましい口調で言われて、岬は考えた。クラブハウスでシャワーを浴びた後、監督に呼び出された。今回の活躍で来期のスタメン確実だと言われ・・・気づいたら、ピエールに飛び付かれていた。 普段冷静なピエールが自分のこと以上に喜んでくれたのは、岬にとっても嬉しい誤算だったが。 「・・・ごめん」 大方想像はついていたものの、あまりに予想通りだった。若林は苦笑し、それから岬の頭を撫でる。 「とりあえず風呂入ろうぜ。もちろん一緒に」 「うちのお風呂、そんなに広くないってば」 そう言いながらも、岬は強く引っぱる若林の腕に身を任せる。試合中とは違う意味で翻弄されるのも、やっぱり心地好い。憎らしいと思いながらも、やっぱりスゴイと何度も感嘆した。 「岬」 顔を上げた岬に微笑みかけると、若林はその髪を梳いた。 「おめでとう」 「ありがとう」 一瞬で甘い恋人から、ライバルに変わる。そのどちらからも目が離せないで、岬は微笑み返した。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 最初は浮気疑惑話の予定が、何故かあまりイチャイチャしない話に。 設定としてはIFシリーズの後、妄想シリーズの前、の感じです(微妙につながっていないのですが)。 やっぱり、岬くんにはリーグ・アンで活躍して欲しいので、未練たらしく書きました。
スポンサーサイト
テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
|