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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
ホワイトデート
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。


「お礼に渡したいものがあるから」と若林は言った。
 チョコレートをあげたのは単なる結果に過ぎない、岬が今更そう言い張っても、今の状況は改善すまい。

 バレンタインデーにプレゼントを贈り合うのは、こちらでは普通のこと。若林のリクエストはチョコレートで、岬は単にその通りにしたつもり、と言い訳したのだ。だが、若林はことさらに喜んでみせ、お返しを楽しみにしろ、と言ってのけた。

 そして、その言葉通りの3月14日。

 いつもの通りハンブルク駅で待ち合わせ…とは言え、パリとは寒さの質が違う。頬に当たる風は痛い程で、岬はマフラーを巻き直す。

 ハンブルクに来る時は、寒さ対策は欠かせない。上着にマフラーに手袋に・・・普段かぶらない帽子まで着けようか迷う。

 それなのに、不思議と寒かった覚えはない。屋内が防寒仕様になっているのは当然として、寒い思いをした記憶はない。

 若林くん、早く来ないかな・・・手袋ごしに掌を擦り合わせ、岬はそんなことを考えていた自分に気づいた。
 今日は練習が終わってから行くから、遅れるかも知れないとは聞いていた。
 吐く息が白い。冷えると思っていたのも道理で、建物の隙間から見上げた空には雪まで舞い始めている。
「寒いな・・・」
確かに今日はホワイトデーではあるけれど、日本を含むアジアのごく一部の行事に合わせたように雪が降ることはないのに。
 その日を意識させることはないのに。


「すまん、待たせたな」
「ううん」
若林が着いたのは、それからしばらくしてからだった。
「大丈夫?」
帽子なしの頭は半分白く塗り替えられている。見るからに雪の中を走って来たことが分かる若林に、岬は雪を払おうとしたが、思ったよりも敵は手ごわかった。若林の髪の先についた雪を落とそうと、岬が少し背伸びをする。

 かわいい顔が近づいて、困る。
 良い香りがして、困る。
髪に触れる手が優しくて、困る。

 岬に雪がかかりそうになった、以外に理由はいくつもあった。結果として若林はかばうつもりで腕を伸ばしたのだが、岬はそれにつられてバランスを崩し、若林に抱きつく形になった。その弾みに、冠雪ばかりではなく、肩に載っていた雪までが滑り落ちてくる。

「ごめんね」
濡れてしまった髪から雪を落としながら、岬は恥ずかしそうに頬を染めた。色白の頬がほんのり染まっている様子はかわいくて、若林としては、取り繕っても笑顔になる。
「悪い、大丈夫だったか?」
最初の理由はごく単純なことだった。その結果は残念ながら逆効果としか言えないが、お互い負けず劣らず雪をかぶっている姿に、つい笑いがこみあげる。
「若林くん、雪だらけ」
「岬こそ」
意識して、堅くなってしまった気持ちは多分残っている。でも、胸の中に点った楽しさが暖かく心を溶かしていくのを感じて、岬は顔を上げた。

 一緒にいるだけで寒さを忘れてしまうなんて。

 相変わらずお互い雪をかぶって、出来損ないの雪だるまのようなのに。

「早く帰ろうぜ。それで焼きマシュマロしよう」
「前に言ってた?」
岬の話をちゃっかり覚えていて用意している辺り、若林にぬかりはない。
「そう。ちゃんとマスターしてきたから、焼いてやるからさ」
「・・・何か作為を感じるけど、まあいいや。許してあげる」
振り向いて手を差し延べた若林の笑顔に、岬もつられて微笑む。雪の中だけにいっそう清しい気がして、若林は手をつないだ岬を何度も盗み見た。

 積もり始めた雪道に、足跡が続く。
 まだデートも成り立たない二人なのに、足跡はまるで寄り添うように並んでいた。


(おわり)


拍手ありがとうございます。
真っ白ではないけれど、始まって間もない二人で。・・・ってキャンディともろかぶりなんですが。
実はこちらは書きはじめた時は、ちょっとHにしていたのに・・・何故かこうなりました。よくあることです。


以下、拍手お礼:
snow様、コメントありがとうございます。
岬くんには甘いものが本当に似合いますよね。
でもなかなか素直になれなくてじれったくて・・・それに対して、とにかく理解するまでどんどん頑張る若林くん♪早く気がついた方が身のためだと思うのは私だけなんでしょうか。
こちらこそ、いつも可愛くて清純な岬さんに萌えを頂いております。妄想位しかご提供できずにすみません。

拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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