※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 時差と距離と。
ドイツと日本が遠いのなんて、とうに知っていたのに・・・諦め切れなかった。付き合ってはいても、ほとんど会えない分常に募る思いは、時々どうしようもなく膨れ上がる。
声が聞きたい。
気がついたら、電話を握っていた。
何回コールしたかは分からないが、ひどく長い気がした。 「若林くん」 声が聞こえた途端、胸が音を立てるんじゃないかと思うくらい高鳴った。同時に、胸の中のもやもやが少し軽くなった。 「おはよう、岬」 「どうかしたの?」 いつもよりゆっくり話す声は、眠気混じりに聞こえる。いつも一番に俺の心配をしてくれる岬に、また胸が温かくなる。 「岬の声が聞きたくなってな」 右手に携帯を握り、左手で机の上の写真立てを取った。岬がこの部屋で笑っている写真に、電話の向こうのため息が重なる。 「・・・良かった。もう心配かけないでよ」 こういう時の、安堵と照れの混じった声も好きだ。普段にない甘さに、また心を揺さぶられるけれど。 「はは、悪いな。岬は変わりないか?」 「僕は大丈夫。最近朝が寒くて、起きにくいけど」 それで思い出す。寒がりの岬と一緒に寝ると、決まって明け方にくっついて来る。腕を絡ませ、身を擦り寄せてくるものだから、そのまま抱きしめて放してやらなかったりするのだが。 「それは大丈夫といえるのか?」 あの明け方の可愛すぎる様子を思い出し、つい聞き返したが、楽しそうな笑い声が返事代わりだった。 「僕は大丈夫だけど、来生くんが最近遅くて。井沢の自転車の後ろに無理矢理乗り込んだりしてるよ」 そう言えば、来生も朝は弱かったな。 「井沢は朝から髪形を完璧に決めてて、部室で絡まってる来生くんの髪の毛まで梳かしてあげてるよ」 岬の説明に、情景が浮かんで困った。さらさらでほとんど癖のつかない岬に対し、来生は天然パーマ、井沢は早起きして朝からセットに勤しんでいるらしい。 「笑っちゃダメだよ」 岬は無茶なことを言い、自分も少し笑い声を立てた。 「ごめんな、忙しい時に電話して」 遠くに聞こえる物音で、それほど時間のないことを悟る。岬のことだから、余裕をもって行動しているだろうが。 「おかげで目が覚めたよ」 「そりゃそんだけ笑ったらな。朝来生の顔見て吹き出すなよ」 俺は今度見たら、間違いなく吹き出しそうだが。 「そんなの言われたら、笑っちゃうよ」 笑いかけのままの口調で文句をつけてから、岬は小さく呟く。 「でも元気出た」 決して元気がなかった訳ではない。普段通りの岬だ。ただ、俺の心が幸せに満ちているように、岬の気分もよくなってくれているらしい。 「俺も」 ガキの頃から、人並み以上に心も体も鍛えてきたつもりだ。だが、それでもこんな他愛のないことで、心に力が満ちるような気がする。
特効薬だよな、お前って。
言ったら、また何とも甘いため息をついて、照れるかも知れないが。しみじみと思った。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 寒くなって来ましたので、南葛高日常風景と少し甘える若林くん、で。 来週は若林くん誕生日に更新予定。まだネタも思いついていませんが。 以下拍手お礼、 snow様、いつもありがとうございます。 黒鳥、楽しんでもらえたようで何よりです。 三杉くんの姿の岬くんはとても美しいでしょうし、岬くんの姿の三杉くんは夢に見る怖さだと思っています。 何より、若林くんの心臓には悪そうです。モヤモヤしっぱなしですし(笑) 最終回の岬くんにはその分いつもより少し甘えてもらいました。 snowさんがおっしゃる通り、絶対目を覚まします。 折角岬くんが甘えてきているのに寝ているなんてもったいないことしませんから。 今までの分、隣に三杉くんがいたってお構いなしにいちゃいちゃすれば良いと思います(笑)
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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