※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
元々は敵同士とはいえ、チームメイトとしていれば、自ずから親しくもなる。 そのチームで戦うのも明日が最後。決勝のドイツ戦を控えて、夜練をした後も興奮は冷めやらぬ。 まして、若林の三文芝居(日向説。若林は「俺は千両役者だ」と反論)が露見したことで、今までの反動が起こった。
食堂の一席に座らされた若林の前に、ところせましと菓子が並べられる。心のどこかで若林を信じ、お土産に持って来た日本の菓子をキープしておいた修哲トリオや森崎の忠誠心に皆が涙する中、若林の頭越しに覗いた石崎が手を伸ばそうとし、たまたま隣にいた日向に阻止された。 「こら、石崎」 堂々の長男気質に加え、日頃の寮生活は日向の反射神経を限界まで鍛え上げていた。 「だって、しばらく日本の菓子なんて食ってねえし」 ぴしゃりとやられた手をさすっても、頬を張り飛ばされなかっただけマシじゃないかと周囲の反応は薄く、石崎は口を尖らせる。 「みんな我慢してんだろうが。ポッキーなんか岬も好きなんだぞ」 当然のように話を振られて、岬は複雑な顔をせざるを得ない。岬が日向とポッキーを分けて、最後の一本を取り合いしたのは、もう何年も前の話だ。 「そうか。じゃあ、これ食えよ」 そして、当然のように差し出す若林にも当惑せざるをえない。ここは人前なのに。 「いいよ。せっかくもらったんだから、若林くんが食べて」 岬としては、いつもの口調のつもりだった。だが、どこかで意識していたせいか、普段よりはそっけない口調に、石崎がかえって気を揉む。 「岬、そんな言い方するなよ。確かに俺も悪いけどさ」 気を許した相手への岬の態度をよく知る日向は、隣の岬を肘でつついた。あまり細かいことを気にしない割に、身内や仲間の様子は目につくのか、俺、悪いことしちまったか?とでも言いたげな視線に、岬は苦笑して、小さく首を振る。 「岬、欲しくなったら取りに来いよな」 若林は更に平気な顔でポッキーの箱を隣に避け、他の菓子を開封した。岬が意地っ張りなのも、そっけないのもいつものことで、むしろ甘えているようなものだと分かっている。 「岬!これやるぜ♪まだ残っているからな」 そして、その場の空気など無視して、岬を喜ばせたい一心で口を挟んだのは松山である。いつの間に戻ったのか、手にした北海道限定ポッキーの箱に、周囲はさすがは松山、と違う意味で評価する。 「あ、ありがとう・・・」 あまりにも率直な松山には、逆らいづらい。岬は差し出されるままに受け取った。 「気にするなって」 満面の笑みの松山に、岬もつられて微笑む。微笑みながら、ほんの少しだけ顔を上げて若林を見た。
岬が恥ずかしがりなのも、若林はよく知っている。それでいて、こうして視線を流してしまう程気にしていることも。
いいぜ。分かってる。
口に出さず、笑みを含んだ目を上げる若林に、岬がそっと目を伏せる。
声一つなく、たったそれだけのやりとりであったが、敏感な者に事情を匂わせるには十分だった。
「若林、そのポッキー今すぐ食え」 「はあ?いきなり何だ、若島津」 和解のことなどすっかり忘れたような若島津の剣幕に、すわ一触即発かと、周囲が気色ばむ。 「若島津くんの言うとおり。ケンカの元になっちゃいけないからね」 三杉までも訳知り顔で言い、二人の意図に気づいた岬は表情をすっと笑顔に隠す。 「片がついたところで、この話はおしまい。そろそろ寝ないと、明日は早いよ」 誰かに心を、唇を盗まれたことがあるとは、毛ほども感じさせない、天使そのものの笑顔に、訳知りの二人がそっと顔を見合わせたのは言うまでもない。
そして、もう一方の当事者はその一連の動きを眺めながら、貢ぎ物(予定)のポッキーを袋の中に隠したのだった。
(終わり)
拍手ありがとうございます。 決戦前夜なのに、この緊迫感のなさは一体。 この時系列であと一つ書きます。
以下、拍手お礼: 美砂様、いつもありがとうございます。 Jr.ユース編は本当に妄想しがいがあります。 そして、合宿は書いていて楽しい♪ らぶらぶの苦手な私としては本当に助かっています。
拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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