※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 合宿所での夕食を終えたものの、もう少し身体を動かしたい、と岬はボールを手にグラウンドに出た。 外で走り込みをしている者も、部屋で柔軟をしている者もいる。鍛え方もそれぞれ違うから、と誰にも声をかけずに来たのは正解だったらしい。ゴールポストの近くでトレーニングをしている人影に気付く。 「若林くん」 「み、岬・・・」 悪役を演じ、チームの中では翼と三杉、そして岬を除いては話す相手もいない若林である。自分の練習も、皆の練習に付き合った後、一人でこなしていた。 「ちょうど良いや。シュート練習付き合って?」 「ああ」 岬は一通り訳を聞かされていた。だから、それ以上の会話は必要なかった。
パス練習を組み込んだシュート練習をひとしきり終える頃には、空は暗くなりかけていた。パリは気候の割には緯度が高いため、夏の日照時間は長い。 「お疲れさん」 「お疲れ様。ありがとう」 さりげない会話をかわしながら、ボールを片付ける。ボールは見えにくくなる時間だが、それでもお互いの表情は分かった。 「若林くん、疲れた?」 不意に尋ねられ、若林は岬を振り返る。倉庫近くにある木の下に佇む岬が、じっと見つめて来る視線を感じて、若林は一歩近付いた。 「お前って本当に太陽だよな」 「え?」 誕生日の話になった時に、岬が春生まれだと聞いて、なるほどと思ったことを覚えている。 「若林くんは12月か・・・分かる気がする」 そう言い返された時の春の陽射しのような笑顔が、どんなに眩しいものだったか。
その笑顔も見えないのに、温まっていく心。
いきなり抱きしめられた岬は、少し驚いたものの、すぐに落ち着いた。木にも隠れ、倉庫の影にもなっているおかげで、誰にも気付かれる恐れはない。 若林のやり方はともかく、指摘は正しいと岬も思う。自ら北風を自負する若林だが、冬に耐えるからこそ力を蓄えられる。 「・・・やっぱり少し疲れたかな」 覆いかぶさるように抱きしめる若林の背中に、岬はそっと腕をまわす。人の盾になって大きくなったこの背中を守ることはできなくても、細かい傷を癒せたら。 「特別に甘えて良いよ」 急に年上ぶる岬に、若林が少しだけ笑い声を立てる。さっきまでの気分は春風に飛ばされて、温かさと愛しさだけがこみ上げる。
もう少し暗かったら完璧だったな。
その言葉が頭に浮かんだのは、キスをしてからだった。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 うたた寝したら遅くなりました。 時間+場所の合宿シリーズです。やっぱりJr.ユース編好きだ!
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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