※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 最終回。 10
「記憶がなかった時のことは覚えていないけど、大切にされていて、幸せだった気がするんだよ」 それから、岬と話して少し分かった。岬には、記憶を失っていた時のはっきりした記憶はないが、大切にされていて、幸せだった気がするらしい。 そして、俺に告白された記憶も、残っていない。
だから今の岬は俺を警戒せずに、俺の隣に座っている。
俺は、記憶のなかったお前を・・・。何度も何度も抱いた。恋人のふりをして、何も知らない岬を汚した。
許してもらえるとは思わなかった。告白しただけで、逃げてしまった岬のことだ。俺を恐れ、二度と会ってはくれないだろう。だが、岬をだましたことには変わりない。 「すまん、岬」 「ん?どうしたの?」 いきなり頭を下げた俺に、岬は不思議そうに瞬きをした。くすぐったそうな表情も生き生きとしていて、岬らしいと思った。そして、この嘘の時間が終わろうとしていることを痛感する。 「俺はお前の記憶がないのをいいことに、色々卑怯なことをした。許してくれ」 岬がショックを受けないように、余計なことは黙っておくことにした。頭を下げている俺の前で、岬はしゃがみこむと、俺の顔を覗き込んだ。 「あのね、若林くん。僕も話があるんだ」 岬は俺をソファーに座り直させると、その目の前に立った。 「僕、少しだけ記憶が残っているみたい」 心臓が破裂するかと思った。一瞬で跳ね上がった鼓動を更に激しくしたのは、岬からのキスだった。 「君が刻み込んでくれたから」 俺の顔に添えられた両手が離れ、岬が微笑むまでは、まるで時が止まったかのように思えた。潤んだ岬の瞳から、きれいな涙がこぼれ落ちる段になって、やっと動悸は治まった。俺は岬を抱き寄せて、記憶喪失の時によくそうしたように、腕の中に抱きこむ。 「好きだぞ」 「言うのが遅いよ」 ふざけ合いながら、またキスを交わした。嘘は真実に変わり、俺には恋人ができた。
(おわり)
とりあえず、最後まで上げておきます。 明日からは日曜か月曜更新で。 休みが変則なので、更新も不定期。
スポンサーサイト
テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
|