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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
グー・チョコ・パイン
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

 カレンダーをめくると、大きく丸を付けた14の文字が目に飛び込んできた。

 2月14日。

 今まで、本当にどうでもいい日だった。日本にいる間は、浮ついた話よりもサッカーだったし、ドイツに来てからは、この日自体が浮ついていなかった。

 でも、今年は違う。

 14日は岬と会う約束ができていた。


 約束までずいぶん余裕のある時間に、駅に着いた。フランスからの電車が早く着くこともある以上、早目にたどり着くのは当然だった。
「岬」
「若林くん」
珍しく時間通りにホームに滑り込んで来た電車から、岬が降りて来るのが見えた。他の乗客をすり抜けて走ってきた顔は、少し上気しているようで、赤く見えた。そこで、思わず見惚れる。
「走って来なくても良いのに」
「あの大きな人達に巻き込まれる覚悟はないよ」
岬はくすくす笑いながら、俺の隣に立った。見上げる顔はそう遠くないから、背は低くはなくても、体格差はある。
「君くらい大きかったら、ね」
羨ましげな口調に、そんなに華奢な癖に気が強いところがかえって守ってやりたくなる、とは言えないまま、隣を歩く。いつものように他愛もない話すら、気持ちは弾む。
「じゃあ、荷物位持とうか」
「荷物少ないし、平気だよ」
岬は笑ってカバンを持ち上げてみせた。確かに、岬が大きな荷物を持っているのなんか、見たことはないのだが。
「じゃあ、そこの柱までは?」
「何それ。小学生みたいだよ」
岬はくすくす笑って、目を細めたまま俺を見た。
「若林くんって、そういうこと言いそうにないもん」
「そうか?グ・リ・コとかやってたぞ」
俺がそう言った瞬間、岬は口元を押さえた。吹き出しそうになったらしい。そりゃあ、俺のイメージではないだろう。聞いたことはあっても、やったことはないし。

「ごめんね、笑ったりして」
手を合わせ、軽く頭を下げる岬に、俺は帽子を被り直す。
「じゃあ、やってみるか?」
「え?」
目を見開く岬のかばんを手に取る。目の前には下りの階段が見える。
「じゃんけん・・・」
突然の呼びかけに、岬は反射神経でグーを出して来た。俺はパーを出し、階段へ向かう。
「先に下まで着いた方が勝ちな。負けた方が、どれかをおごること」
「パ・イ・ナ・ツ・プ・ル」
岬はええっ!?と驚きながらも、階段の上から俺を見下ろす。見ているだけで意識してしまうような可愛い顔をしていても、岬は売られた勝負から逃げたりはしない。
「じゃんけん!」
「チョキ」
「グー」
今度は岬の勝ちだった。
「グ・リ・コ」
軽やかに階段を下りてくる岬の足取りは、それだけでも見物だった。なかなか下から見ることはないだけに、もっと見ていたかったが。

 最終的に勝ったのは俺だった。とはいえ、僅差の辛勝、遊びではなく、サッカーだったら、うなされてしまうところだろう。
「じゃあどれか頼むな」
つい笑った顔のまま言うと、岬もクスクスと笑いながら頷く。
「まさかドイツで若林くんと遊ぶとは思わなかったよ」
いかにも楽しそうに笑い声を立てる岬に、後ろめたさがなかった訳ではない。だが、岬が笑ってくれるのが嬉しくて、普段の自分らしくない振る舞いの恥ずかしさも薄れた。

「じゃあ、買ってくるね。ちょっと待ってて」
菓子屋を何軒かまわり、岬は一軒の店に決めた。確かにショーケースに入れられたチョコレートは滑らかで、いかにも優美だ。
「はい」
「ダンケ」
受け取りながら、つい顔がにやけそうになる。賭けの結果であり、ドイツでグリコ・チョコレート・パイナップルなんて一つしか答えのない三択の結果であっても、バレンタインデーに岬からチョコレートをもらったのは事実だ。
「帰ったら食おうぜ」
「うん、そうだね」
岬は笑顔で頷く。随分吟味して買っていたことを思い出すと、微笑ましい。
 どうしても、岬からのチョコレートが欲しかった。バレンタインデーにプレゼントを贈るのは普通のことだから、意識する必要もないのに。
「何せ、バレンタインチョコだからな」
つい言いたくなった。
「えっ!?な、何言うんだよ、若林くん」
岬は少し赤くなって、首をぶんぶん振った。
「そんなんじゃないからね」
「ああ、分かってるって」
躍起になって否定する岬が、可愛くてならない。そんなに必死にならなくても、俺はまだ待てるから。
「またくれよな」
睨んでみせる岬にじゃんけんのパーを差し出した。
「もうその手には乗らないからね」
岬は笑いながら、俺の手をチョキで挟んだ。


(おわり)


拍手ありがとうございます。

若林くんと岬くんが楽しそうに遊ぶ話、を書きたかったので。結果的に無糖になりました。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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