※二次創作を更に混ぜております。いつも以上に閲覧にはご注意下さい。 「いわくつきの鏡だって」 三杉はノートを手に、その鏡のいわく、を語り始める。 「何でも、某王国の秘宝だったらしくて、真実を映す鏡、と言われていたらしいよ。その国が滅んでから行方が分からず、伝説になっていたんだけど、遠い国に嫁いでいた王女に託されていたとかで、ずっと受け継がれていたらしい」 三杉はノートを閉じ、代わりに装飾封筒に入ったカードを取り出す。 「それが盗まれて、オークションに出されていたらしい。持ち主はあまり公表したくないらしくて、僕も極秘裡に調査してたんだけどね・・・」 三杉の渡したカードを岬は覗き込む。 「オークションに出る前が良いの?」 「それが、保管場所は秘密らしいんだ。できれば、オークション会場で」 「分かった。オークション会場の地図と建物の図面お願い」
南葛高校の岬は、同級生の三杉に頼まれ、非合法の人助けをしていた。夜な夜な怪盗ボールとして、盗まれた物や騙された物を取り戻す仕事である。 そして、それを追うのは同級生である若林である。岬に想いを抱く若林は、怪盗ボールと岬が同一人物とは知らぬまま、怪盗を追うのだった。
「今回はオークション会場だって?」 「ああ」 いつものメンバーに加え、付いてきたシュナイダ-に若林は説明を加える。律儀な怪盗ボールは今回も予告状を出して来た。 「着いたぞ」 鏡の由来書を読みながら、シュナイダ-は首を捻る。どこかで聞き覚えのある話、だ。 「とりあえず、オークションの邪魔にならないように散らばれ」 若林の指示通り、皆が会場に散らばる中、若林はステージの袖に控えることにした。
間もなくオークションが始まり、数点が出された後、目玉商品として出されたのは、例の鏡だった。
「来た!」 途端に真っ暗になった会場に、若林が飛び出す用意をする。懐中電灯をくわえて舞台袖から出たところで、それを上回る光に、暗闇に慣れた目が眩んだ。 「う、わっ!」 投光機で会場を照射し、その隙に岬は鏡に近づき、手に取った。そのまま立ち去ろうとした岬は、背後に迫る気配に身を翻す。 「気づかれたか!」 若林がこんなに近くにいたとは思わなかった。岬はそのまま反対の袖まで走り切り、開けておいた天井裏から屋根に出た。 「く、くそっ!」 追おうとした若林は前回の教訓でかけていたサングラスを外した。怪盗のもののように遮光度が高くないため、それでも影響がある。若林はちらつく目を押さえながらも追おうとした。 「若林さん、外にいます!」 トランシーバーから聞こえる滝の声に、慌てて会場から飛び出す。 「あれです!」 滝が指差したのは、夜空を飛んで行くハンググライダーだった。
「持ち主のお屋敷が・・・と」 ハンググライダーを途中で降りた岬は、三杉に頼まれた通り、鏡の持ち主の家に向かった。黙って返しておいて、という指示通り、庭を横切り、窓から忍び込んだところで、人の気配を感じた。 「ミサキ!?」 聞き覚えのある声に、背に冷水を浴びたような緊張が走る。 「ピエール!」 怪盗ボールの姿のままの岬を、ピエールは静かに見、手の中にある鏡に息を飲んだ。 「怪盗ボールはルパンのような存在と聞いていたが」 アルセーヌ・ルパンは怪盗ではあるが、時に困っている相手を助ける義賊的な性格を持ったキャラクターとしても知られている。母国フランスの生んだ怪盗の名を口にしながら、ピエールは鏡を受け取った。 「この屋敷は伯母の持ち物で、先日亡くなったんで、俺が代わりにここで・・・」 ピエールの言葉は途切れた。鏡を元あった居間に飾り、ピエールは改めて頭を下げた。 「ありがとう。君のおかげだ」 「ううん。・・・それよりも、誰にも言わないで」 岬の言葉にピエールは顔を上げ、もう一度岬を見返した。いつもの学生服も凛々しいが、この姿もよく似合っている。 「絶対に言ったりしない。この鏡に誓う」 それだけ聞けば十分だった。微笑んで立ち去ろうとした岬に、ピエールも笑顔を向ける。 「何か困ったことがあったら、いつでも言ってくれ」
若林は捜索を続けながら、必死に冷静さを保とうとしていた。 怪盗ボールの肩越しに一瞬鏡を覗き込んだ時、鏡に映っていたのは、岬だった。真実を映すという鏡の伝説を知ってなお、混乱は収まらない。
怪盗ボールの正体はもしかして・・・。疑念は尽きない。
(つづく)
拍手ありがとうございます。 大体、全8話になりそうです。 パラレルの面白いのは結末が筆者の頭にしかないこと。今回はWパロディですが、たいていはオリジナル設定なので、どこに転がるか自分でも楽しみだったりします。まあ、普通のパロディすら予想外に進んだりするのですけれど。
あと、「怪盗」というタイトルを考え、フランス人のピエールを出すことにした時から、ルパンを連想していたので、無事に使えて良かったです。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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