※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「ペン、借りるね」 「ああ、どうぞ」 連絡先を教えて欲しいと若林に乞われ、岬は何気なく若林のテーブルの上を覗き込んだ。整頓されている中に、書きかけの手紙。 「手紙、書いてたの?」 「ああ、昨日な。詰まっていたんだが、おかげで大ニュースができた」 文面を走り読む程の間はなかったものの、宛名が翼なのが見えてしまった。ごまかすにも中途半端だと、岬はとりあえず聞いてみることにした。 「翼くんと文通してるの?」 「ああ。翼はロベルトのこともあったから、書いてやれって周りがうるさくてな。かれこれ三年だ」 「それはすごいね」 思うところがない訳ではないが、三年もの間文通を続けられることは岬にとって驚嘆だった。 「岬は翼に手紙を書かないのか?」 何となく口にしてから、若林は気づいた。それは口に出すべきではなかった。 岬が翼に手紙を書いていないことは、何度も知らされていたし、そうでなければ岬の消息はもっと早く届いていただろう。 あれだけ親しかったのに、手紙のやり取りもしない理由も、急に寂しさが増して見える岬の笑顔からも読み取れそうだ。 「書かないよ。返事が来る頃に、僕がどこにいるか・・・僕自身にも分からないもの」 そう言いながらも、岬の目はチラチラ、と若林の机の上に動く。気になっているのか、と若林は岬に手紙を差し出した。 「まずいこと書いてないか、チェックしても良いぜ」 「いらないよ。人の手紙を見る趣味はないし」 首を振る様子に、どうやら読みは外れたらしい、と若林はまだ思わしげな岬を盗み見る。岬の一瞬見せた表情を思い出す。 「岬、俺も連絡先書くから、ちょっと待っててくれ」 若林はペン立てから取ったペンを岬に渡すと、もう1本用意した。
住所 電話番号
丁寧に書いて、紙を折り返す。
「じゃあ、これ」 「あ、ペンありがとう」 紙とペンが行き違った後、岬は若林の連絡先を目でたどり、その下の折り目を広げた。
岬へ
また会いたいから、是非遊びに来いよ。
若林
それだけ書かれたペン文字は岬を驚かせるためか走り書きではあったけれど、若林の気持ちは十分伝わる。
「手紙、もっと出して良いか?」 冗談っぽく笑いながら、若林が尋ねる。歳の割に、なかなか人を喰った笑顔だと思いながらも、岬は笑い返さずにはいられなかった。 どうして、君はいつも気づいてしまうの? 「僕、手紙書くの苦手だけど良い?」 「手紙なら幾らでも書いてやるから、ちゃんと連絡先教えろよ?」 筆まめな上に、何枚も上手な若林の言葉に、岬は苦笑しながら約束を交わしたのだった。
(おわり)
拍手ありがとうございます。
先日、資料等のページを少し足したのですが(シュミ特4回、アンソロ補遺)、某誌シュミ特を見ていて、若林は筆まめだなあ、と。そして書きたくなったのでした。
先日キリ番踏んでもらえなかったので、次回90000に繰り越しです。
以下、拍手お礼:
snow様、コメントありがとうございます。 冬の朝に思いついたので、温かい気持ちになったというお言葉が嬉しかったです♪距離が遠くても、心の距離だけは近くあってほしいものです。 更新滞りがちですが、表に出せないものはたくさん書いているので、いざとなったらそれを・・・(いや、ダメだ) こちらこそ、いつも萌えをありがとうございます。
なお様、いつもありがとうございます。 ご友人のエピソード、素敵ですね。 メールは何度も読み返せるし、伝わりやすいですが、声を聞きたい時ってあると思います。 昭和のドラマ、笑いました。確かにそうです。 今回の岬くんが素直なのは、気持ちを伝えたり、もらったりすることの喜びを知っているからですね。遠いと、努力をしなければ近づけません。今お返事を書きながら、ものすごく考え込みました。本当に勉強になりました。ありがとうございました。 恥ずかしながら、ハマったのは子供の頃見ていたロボットアニメです///一本書いたら気が済んだので、今日はちゃんと眠れます。
拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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