※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 部屋に着くなり、岬を抱きしめた。慌ただしかったが、岬は黙って俺に身を預けて来た。 不安があった訳ではないが、嬉しくて仕方なかった。
「岬」 しばらく抱き合った後、たどり着いたベッドの上で、ゆっくりと口を開く。 「なあに?」 俺の胸にもたれた岬が聞き返す。その声は、いつも凛としている岬にしては甘いもので、確かに甘えられていると感じる。 「優勝したら」 「優勝したら?」 聞き返す岬の身体に手をまわす。相変わらず華奢で、簡単に抱きすくめてしまうから、少しだけ慎重に、少しだけ優しく。 「お前がほしい」 「・・・うん」 小さく頷く岬の髪を透いて、耳元に唇を寄せる。 「絶対だぞ」 「君こそ、逃げないって約束してね。ここまで来たら、最後までこのチームに付き合ってもらうよ」 重ねた手の親指を、岬が握る。その手を握り返して、包む。
岬が何を言おうとしていたのか、その時には分からなかった。 だが、岬は予想していたらしい。この大会で俺が出場することになることを。
優勝に沸く日本チームの横をすり抜けて、岬が通り過ぎて行った。レセプション会場から、バルコニーに出たようだ。何となく、後を追って動く。 ふと脇を見ると、翼はこの前のことなど忘れた様子で、ロベルト本郷に纏わり付いている。翼も苦しくて寂しかったのだろう。良かったな、とだけ思った。
さて岬は、と目で追うと、一人で窓の側に佇んでいた。 「どうした?」 肩を叩くと、岬は薄紅色の頬を隠すように頬を覆う。 「みんながいて、君がいて・・・良い景色だなと思って」 会場では、チームのみんなが笑っている。俺も何度かシャンパンを浴びせられそうになったのに、怒る気にはならない。 そう言う岬は、微笑んでいるのに、今にも泣き出しそうに見えた。 もうすぐお別れだ、などと思っているに違いない。それをこうして独りで耐えて、楽しかったことだけを胸に焼き付けようとしているのに違いない。 「俺が、寂しい思いなんてさせると思うか?」 「あはっ、本当だね」 抱き寄せた岬は、そのまま顔を上げようとはしなかった。俺の胸に顔を埋め、抱き着く岬の頭を撫でる。 お前がここにいる意味も俺には分かる。だから離してはやらない。 「今晩、待ってるね」 ごく小さく囁かれた誘惑に、髪の毛がくしゃくしゃになるまで抱いてやった。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 三人の人間いたら、それぞれ違う視点で違うことを思う、という気持ちで書きました。 三人のうち、翼くんが書きにくかった。直感的文章は向いていないと実感しました。
Jr.ユースの時点で若林くんと岬くんが付き合っていたら、という話ですが、この設定でもう一度くらい書きたいものです。いや、一度といわず・・・。
今年も一年お世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。 良いお年をお過ごし下さい。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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