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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
三人(8)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

 宿舎に近づいた途端、しかめっつらを作っている若林くんに、つい笑いそうになった。
「そういう役目なんだから仕方ないだろ」
空はすっかり暗く、街灯の明かりでは、これだけ近くないと、表情もわからないと思う。それでも前もって用意する生真面目さは相変わらずだ。
「若林くんって可愛いね」
才能があってカッコイイだけじゃない、それ以上の人間的な魅力は、彼が自分で形成してきたもの。
「そんなこと言ったら、にやけそうになるだろ」
唇を尖らす若林くんに、ますます触れたくなる。友達と別れる時とは違う、こんな甘い切なさがあるのだと、またひとつ知った。

 若林くんと別れて部屋に戻る。同じフロアーだけど、バラバラに戻ろうとして、部屋の前に立っている翼くんに気付いた。
「遅かったね」
「ただいま。若林くんに送ってもらったから大丈夫だよ」
若林くんから聞いたことを、翼くんに投げかけようとは思わない。必要があれば、自分で言って来るだろうから。
「おかえり」
ドアを開けてくれた翼くんに、家から持って来た紙袋を取り出す。
「翼くん、家からお菓子持って来たの食べる?」
「へえ。ありがとう!」
いつも通り笑い合って、昨日のようにテーブルにお菓子を広げる。

 再会した日、翼くんに言われた。
「俺と岬くんって、昔一つだったような気がしない?」
まるで、ひとつの心のように、意思が通い合うのは、とても心地好い。
「そうだね」
そんなことを話しながら、僕は違う相手のことを考えていた。

 分からないから不安なのか、不安だから気になるのか、どうしても心から離れない。

 でも、一緒にいる時は嬉しくてドキドキして、笑ったり怒ったり、すねたり。一喜一憂させられるのすら幸せだった。こんなに、感情を揺すぶられてしまうことに、感動する。
 若林くんといると、色々な自分に気付かされる。そして、自分のことも少し好きになる。

 おやつを食べながら、今日の話をする。練習が終わった後、翼くんは練習していたらしい。
「でも、二人ともいないからつまらなかったよ」
膨れる翼くんに、手を合わせる。
「ごめんね、若林くんには頼みやすいから・・・」
「ねえ岬くん、どうして若林くんに会いに行ったの?」
そう言われても、難しい。でも、思い切って言ってみる。
「海外で心細い思いをしてたらいじめてやろうと思ったんだよ」
言った途端、翼くんは目を真ん丸にして見返してきた。
「岬くんもそういう冗談言うんだね」
「冗談じゃないんだけどね」
そのまま、クッキーを一つ口に入れた。翼くんはうん・・と頷いて、僕を見た。
「岬くんって若林くんに甘えるよね」
「そう?」
咄嗟に言葉が出てこないまま、翼くんを見た。小学生の頃の翼くんは、とても幼いイメージがあった。僕より2ヶ月年下で、どこか弟みたいな気持ちがあった。でも、今の翼くんは背負う空気も違っていて、あの頃とはまるで別人のようだ。
「岬くんって人にワガママ言ったりしないのにさ、若林くんには本音でしゃべるんだなって思った」
確かにそれはそうかも知れない。若林くんは笑顔を繕うな、と言う。若林くんの前では本音で話す癖がついた。むしろ、今まで引っ込めるくせのついていた本音を出せるようになったと言うべきかも知れない。
「言わないと、若林くんものすごくいっぱい注文するんだよ」
僕がいかに食べると言っても、若林くんほどではない。無理に食べて、お腹いっぱいになった。
「そういうこと言ってるんじゃないんだけどな」
ごろん、と寝転んだ翼くんに、僕もベッドに横になる。天井を眺めるのは心地良い。
「岬くん」
翼くんの声がする。重力に従う気持ち良さに、首だけで返事する。
「俺と若林くんと、三年前から岬くんのことが好きだったんだよ」
さっきのおやつの話のように、翼くんは淡々と話す。

(つづく)

拍手ありがとうございます。
相変わらず風邪ひいております。
なのに、ちびっこに映画に誘われました。イ/ナ/ズ/マ/イ/レ/ブ/ン。確かにサッカーマンガ好きですが・・・ムム。

以下、拍手お礼:
あまね様、いつもありがとうございます。
他愛のない岬くん、に反応ありがとうございます。そういう自分を受け入れる余裕のできた岬くん、を書きたいのですが、しっかり表現できているかどうか・・・。


拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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