※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
次の日は練習が終わってから、約束通りに岬の家に向かう。 わざととはいえ、周囲を敵にまわした合宿所から離れられるのは有り難かった。しかも、誘ってくれたのは岬である。 「晴れて良かったね」 岬の足も、まるでステップを踏むように軽く、心なしか楽しそうに見える。 こんな時にも、やっぱり好きなんだと感じる。
暑い中歩いて来たご褒美に、岬がコーヒーをいれてくれた。 「若林くんのいれてくれたのほどじゃないけど」 岬の甘えるような言葉に、少し嬉しくなる。 「また飲みに来いよ」 「うん」 ソファーで交わしたキスはコーヒーの味がした。
「なあ、岬」 「なあに?」 荷物の用意をしている岬は、振り向かずに返事だけした。 「翼にライバル宣言されたぞ」 「え?」 岬は手にしていた服を落としたらしく、慌てて拾い上げる。 「何それ!?」 岬がまた驚かないようにタイミングを図りながら、昨日のことを話した。 「お前は?翼のこと、どう思ってる?」 そう付け加えた。岬に翼のことを聞くことに、不安がないと言ったら嘘になる。 久しぶりに見ると、やっぱり黄金コンビは特別だと思わずにはいられない。 「そうだね・・・翼くんといると、不思議なんだよ。こっちの気持ちが全部伝わるような気がする」 岬は考えながら、ゆっくりと話す。そんなことを聞かれるなど、考えもしなかったのだと、よく分かる。 「双子ってこんな感じなのかな・・・。立花くん達には聞いたことがないけど」 それは二人の背中を見ていた俺には分かる気がする。翼と走る岬の背には、羽があるようにすら思える。 そんな感覚が翼の方でもあるなら、どうしても特別な相手になるのは分かる。サッカーしか知らないようなあの翼が、夢中になる訳が。 「でも、ずっと一緒にいるのは辛いかも知れない」 岬は静かに言った。 「翼くんが思ってるほど、僕はきれいな人間じゃない」 「そんな気持ちまで見抜かれそうで怖い」 何度か息を継ぎ、岬が思いを吐き出す。岬が悪い奴、だとは思わないが、考え過ぎるふしがない訳ではない。 翼が岬を心の神殿で奉るように、岬も翼を心の神殿には置いている。ただ、その位置は随分違うようで、俺は安心できた。 「じゃあ、俺になら隠せそうか?」 顔を覗き込んでアピールした俺に、岬は楽しそうに笑い声を立てる。 「若林くん位なら騙せそうな気がする」 いつのまにか、止まっていた手を、岬はまた動かす。 全部分からなくても良い。全部愛して、笑わせてやれるなら。 「岬にならどんだけでも騙されてやる」 慣れた手つきで荷物をトランクに詰める岬に、後ろから手を伸ばす。 「ふふ、やっぱり君って面白いね」 抱きしめる腕に、手を絡め、岬はそっと頬ずりして来た。
それから、しばらく二人でいた。 「そういうことは、だめ」 そう釘を刺されて、頷く。岬が辛い立場の俺を励ましたい気持ちはよく分かっていたし、こうしているだけでも心は満たされる。 「今日のところはな」 わざと明るく言う。微笑み合った顔を寄せて、何度目かの幸せなキスをした。
(つづく)
拍手ありがとうございます。風邪ひきました。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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