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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
三人(5)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。



 シャワールームのドアの音に、どちらからともなく重ねた手を離し、ジュースを口にする。
「お先に」
岬は翼を振り返り、笑顔を向ける。
「ちゃんと耳の後ろも洗ったか」
「若林くん、子供扱いしないでよ」
翼が口を尖らせ、元の位置に座り、また三角形ができる。
 三角形は不安定な形だ。たった一人抜けただけで、二人きりになる。
「今日は岬くんとだったから、久しぶりに思い切り走れたよ」
翼の話をにこにこ聞く岬の様子を眺めながら、もう一杯茶を飲む。そして、また小学生時代を思い出す。昔は二人を見守るのは遠くからだった。

 岬と初めて会った日に、翼は双翼になった。笑い合う小さな二人に追い詰めてこられることに、感じたことのない恐怖を覚えた。それくらい、二人は小さかったのだ。

「岬、眠いか?」
今日のプレイがいかにすごかったかという翼の力説を聞くうちに、岬は眠くなったらしい。あくびを繰り返した岬に問う。
「うん・・・思ったより疲れてたみたい」
少し重たそうに見えるまぶたを何度か上下させて岬は答える。
「わ、若林くん」
こうなった岬がすぐ寝てしまうのは経験上知っていた。俺は岬を抱き上げ、岬が座っていた方のベッドに寝かせる。
「ありがと・・・おやす・・・」
最後まで聞き終わる前に、寝息に変わった。それを見届けてもう一度座ると、こちらを見ている翼と目が合った。
「若林くん、岬くんの扱い慣れてるんだね」
「ん?そうか?」
あまり友好的ではない口調に、こちらもつい口調が険しくなる。
「岬くんってくすぐったがりだから、下手に触ると怒るよ」
そんな風に怒られた覚えはなかった。食事の支度を邪魔した、とか触り方がいやらしい、とかで叱られたことはあるが。怪訝な俺に、翼は大きなため息をつく。
「若林くん、ずるいよ」
・・・言うと思った。写真を送った時も、しつこく書かれていた言葉だった。
「俺のところに来たのは岬の方だぜ」
迫ったのは俺からだが、ドイツとフランスは存外に遠い。その距離を越えて岬が来たから、俺は岬の気持ちを信じた。
「・・・そういう意味じゃなくてさ。岬くんってどんだけ遠くても、若林くん見つけちゃうんだもんな」
普段からは考えられないほどの静かさではあるが、言葉の意味は理解しかねた。
「もう、こんな時間だな」
辺りを片付け始めた俺に翼が言う。
「負けないから。俺だってずっと・・・」
岬のことだとすぐに分かった。
「盗れるもんなら盗ってみろ」
まっすぐに、睨み返した。

(つづく)


拍手ありがとうございます。

曖昧なことを言葉にするのは難しい。更に、作中人物の思考として表現するのは難しいです。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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