※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 岬と恋人になって間もない頃に、岬に全日本Jr.ユースへの参加要請が来た。俺は当初から参加予定だったし、考えていることもあった。 本当は岬も参加してくれたら心強い、とは思うが、強要はしたくない。そう言うと、岬は電話口の向こうで笑った。 「じゃあ、アテにしないで待っててよ」 返事は笑い声とともになされ、岬は参加する気があるらしいと嬉しくなった。おそらく触れることもできないのは分かっていても。
岬が参加したのは、チームがフランスに渡ってからだった。それまでに、フランスJr.に挑んでから決断した、というのが非常に岬らしくて良いと思った。それを報告する岬は、電話口でもはしゃいでいるのが分かる。 「こっちで会うの楽しみにしてるね」 可愛い口調に、俺まで舞い上がりそうだった。
だが、言わなければならないことがある。
「岬、チームに合流しても、俺とは話すな」 「えっ!?」 聞き返す口調には不安が滲んでいた。俺はチーム強化の為に憎まれ役をすることを話した。そして、その逆の役割をするのは、岬以外いないだろうとも思っていた。 「若林くんは大丈夫?」 そして、岬は俺の予想以上に敏感だ。 「岬、慰めてくれよ」 苦境がばれているのを悟り、冗談を装って口にすると、岬は優しい声で応じた。 「良いよ。いつでも言って」 その口調から、岬が俺のことをどれだけ思ってくれているのか、伝わってくる。 「早く会いたい」 言わずにはいられなかった。
加入してすぐ、諸手をあげて歓迎された岬を、遠巻きに眺める。みんなに囲まれながら、岬は優しい笑顔のまま、辺りを見渡した。俺を探しているんだとすぐ分かった。 俺は岬に向けて、指で小さな×を作ってみせた。岬は少しだけ頷いて、また他の連中と話し始めた。 岬を一番近くで取り囲むのは、翼と日向と松山だ。岬と一時期でも同級生でコンビを組んだことのある奴らで、ある意味岬に最も近いといえる。
中でも、翼は嬉しそうだった。他の連中との微妙な距離もあったせいもあるのだろう。岬の名前を何度も呼ぶ。 複雑な気持ちがない訳ではない。ただ、それを言う訳にはいかなかった。
そして練習が始まった。白地に青のストライプのユニフォームは、誰よりも岬に似合った。誰もが岬に注目していた。大空翼の永遠のパートナーと言われる男に。何となく遠巻きにはされていても、翼は依然意識される選手だった。 二人が走り出した。二つの体であるのが不思議なほど、二人は一陣の風となり、走り抜ける。こんな速さの、正確なパスワークは見たことがなかった。グラウンドでなければ、拍手さえ出たかも知れない。
走り終えた岬に、何人かが声をかける。その中には、コンビネーション練習の相手だった翼もいた。 「岬くん、凄いよ!」 嬉しそうな翼に、岬は微笑みを返す。小学生時代に何度も見た光景に、心のどこかが痛んだ。昔ほどの焦燥はなかったけれど。
(つづく)
拍手ありがとうございます。 若林くんはチームを解体しましたが、次に再構築が必要だと思うのですよ。岬くんが加入して良かったな、としか言いようがありません。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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