※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 見慣れたけれど、まだよく知らない街を走る。普段は好きな街なのに、道行く人達すら、いつもよりも冷たく感じる。
若林くんのお誕生日だから、こっちに遊びに来た。大したプレゼントじゃなかったけど、若林くんは喜んでくれた。 「岬が来てくれたのが一番のプレゼントだ」 なんて、歯の浮くような台詞を言う若林くんに、僕まで顔が綻ぶ。若林くんの笑顔に、心まで温まる気がした。 「そんなに喜んでくれるなら、もう少し良いプレゼントにすれば良かったね」 若林くんは呟いた僕に、嬉しそうな笑顔を向けた。 一瞬の沈黙が雰囲気を作った。肩に手をまわし、あごに手をかけて、顔を覗き込まれる。見上げた視線もそのままに、唇が合わさる。 「じゃあ、岬が良い」 ソファーに不意に抱き込まれて、やっぱり怖くなった。 「その冗談好きじゃないよ」 確かに、キスはするようになった。 ハグもする。 でも、それ以上のことは怖い。 それなのに、そんなに軽く求められたら、怖じけづいている自分が馬鹿みたいだ。 「冗談じゃなくて・・・」 手首を掴まれた。ソファーの肘置きに押し付けられて、固定される。 若林くんにしたら、小さなカーテン位かも知れないけど、僕にとっては高い壁だ。 「やめてってば」 「やめない」 こうして抱きしめてくる若林くんの腕は強すぎて痛い。その想いの強さを受け止められるかも怖い。 気がつくと、近付いて来た髪の毛を思いっきり引っ張っていた。 「いたっ」 手が離れる隙に、身を起こす。のしかかりかかっていた身体をどかして、立ち上がる。
「若林くんなんか嫌いだ」
そして今に至る。ただでさえ寒いのに。
ポツポツ。
音を立てはじめた雨に、肩に手をやる。
寒い。一気に体温が奪われる感覚に、心まで冷える。
でも、体を冷やす訳にはいかないから、麻痺した頭で、必死に屋根のある店先に逃れる。 とりあえず荷物から、ハンカチを出す。顔、髪の毛、肩と拭いて、いつのまにか出ていた涙で濡れた顔を拭く。
嫌いなんて嘘だ。
それならこんな遠くまで会いに来ない。 好きで仕方ないのに、若林くんに寂しい思いをさせているのは僕だ。抱きしめてくる腕の強さは君の胸の切なさそのもので、その重さに耐えられなくなった。
「探したぞ」 肩に置かれた手に、心臓が飛び出るかと思った。振り返ると若林くんは僕よりも濡れていて、ずいぶん探しまわってくれたのが分かった。 「帰るぞ」 僕は黙って頷き、差し出された手を掴んだ。
(つづく)
拍手ありがとうございます。 今書いているのが思いの外長引いていて、どうなることやら、です。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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