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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
冬の雨(上)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

 見慣れたけれど、まだよく知らない街を走る。普段は好きな街なのに、道行く人達すら、いつもよりも冷たく感じる。

 若林くんのお誕生日だから、こっちに遊びに来た。大したプレゼントじゃなかったけど、若林くんは喜んでくれた。
「岬が来てくれたのが一番のプレゼントだ」
なんて、歯の浮くような台詞を言う若林くんに、僕まで顔が綻ぶ。若林くんの笑顔に、心まで温まる気がした。
「そんなに喜んでくれるなら、もう少し良いプレゼントにすれば良かったね」
若林くんは呟いた僕に、嬉しそうな笑顔を向けた。
 一瞬の沈黙が雰囲気を作った。肩に手をまわし、あごに手をかけて、顔を覗き込まれる。見上げた視線もそのままに、唇が合わさる。
「じゃあ、岬が良い」
ソファーに不意に抱き込まれて、やっぱり怖くなった。
「その冗談好きじゃないよ」
確かに、キスはするようになった。
 ハグもする。
 でも、それ以上のことは怖い。
 それなのに、そんなに軽く求められたら、怖じけづいている自分が馬鹿みたいだ。
「冗談じゃなくて・・・」
手首を掴まれた。ソファーの肘置きに押し付けられて、固定される。
 若林くんにしたら、小さなカーテン位かも知れないけど、僕にとっては高い壁だ。
「やめてってば」
「やめない」
こうして抱きしめてくる若林くんの腕は強すぎて痛い。その想いの強さを受け止められるかも怖い。
 気がつくと、近付いて来た髪の毛を思いっきり引っ張っていた。
「いたっ」
手が離れる隙に、身を起こす。のしかかりかかっていた身体をどかして、立ち上がる。

「若林くんなんか嫌いだ」

 そして今に至る。ただでさえ寒いのに。

 ポツポツ。

 音を立てはじめた雨に、肩に手をやる。

 寒い。一気に体温が奪われる感覚に、心まで冷える。

 でも、体を冷やす訳にはいかないから、麻痺した頭で、必死に屋根のある店先に逃れる。
 とりあえず荷物から、ハンカチを出す。顔、髪の毛、肩と拭いて、いつのまにか出ていた涙で濡れた顔を拭く。

 嫌いなんて嘘だ。

 それならこんな遠くまで会いに来ない。
 好きで仕方ないのに、若林くんに寂しい思いをさせているのは僕だ。抱きしめてくる腕の強さは君の胸の切なさそのもので、その重さに耐えられなくなった。

「探したぞ」
肩に置かれた手に、心臓が飛び出るかと思った。振り返ると若林くんは僕よりも濡れていて、ずいぶん探しまわってくれたのが分かった。
「帰るぞ」
僕は黙って頷き、差し出された手を掴んだ。

(つづく)


拍手ありがとうございます。
今書いているのが思いの外長引いていて、どうなることやら、です。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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