※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 旧拍手文です。 2
「PSGの養成所のテストを受けるよ」 報告のような相談、に若林は微笑む。若林が勧めていたハンブルクでないのは残念だが、岬が決断してくれたのなら嬉しい。むざむざと日本に帰るのは惜しい才能なのだ。 「ピエールの気持ちはよく分かるぜ」 若林は思い出す。岬と再会する前、あの雑誌に載った遠征試合で、ピエール率いるボルドーと対戦した。ピエールは、ひどく孤独に見えた。 「フィールドでは、確かに誰だって独りだけどな、あいつは特に寂しそうに見えた」 ブンデスリーガでも、ワンマンチームは珍しくはない。だが、たくさんのチーム、選手を見てきた若林の目にも、ピエールは際立って孤独に見えた。 「だから、お前に目をつけたあいつの感性は認めるぜ」 フランス戦が終わった後も、岬を追っていたピエールの視線。若林だからこそ、気づいたのかも知れない。 「すごく上から目線だね」 「あいつには勝ち越してるからな」 全日本としては若林は勝負できなかったが、遠征の親善試合ではハンブルクが勝っている。 「お前がついたら分からないがな」 「それは買いかぶり過ぎだよ」 ソファーの横にちょこんと腰かけている岬ときたら、本当に可愛い。ただ、若林はこの時ばかりはこの宝物のように思っている恋人を、怒鳴りつけたくなった。 「贔屓目だと思うか?お前、俺が好きだからって、評価に手心加えるように見えるのかよ?」 それは、あまりにも若林に対しても、岬自身に対しても失礼である。岬はすぐに理解して、小さく「ゴメン」と口にした。 「俺も言い過ぎた」 笑いに紛らせて、岬の肩に腕をまわし、若林はその手にグラスを握らせる。 「祝杯、な」 「まだ、決まった訳じゃないのに?」 そう言いながらも、岬はグラスを差し出した。ミネラルウォーターが、なみなみと注がれる。 「岬が決心してくれたら同じだ。それだけでも喜びたいからな」 ピエールのためにも、と若林は付け足す。 「ピエール?」 「そう。俺は、お前と走れるピエールがうらやましいけどな」 岬は、誰よりも孤独、ということと向き合って生きて来た。それなのに、岬と走るプレイヤーは不思議と孤独を忘れてしまう。 それを誰よりも分かっていながら、若林自身は岬と走ることはない。 「・・・何言ってるのさ」 笑おうとした岬は、後ろから抱きしめられて、黙ってグラスを置いた。若林が岬の為になるとは言いながら耐えていることを、岬は自覚せずにはいられなかった。 「お前の親父さんが、お前のことを必要にしているとは正直思えない。・・・俺の方が必要にしてるんだぜ」 「うん、ごめんね」 ソファーに押し倒される。熱い腕の中でも、岬は一つだけ言い訳をした。
でも、君にだって、負けたくないんだ。
こうして、愛される関係になってからは余計だった。 だから、いつか君を倒す位に強くなってやる。 抱き合っているはずなのに、心は燃えるようで、おさまりそうになかった。
(つづく)
拍手ありがとうございます。 関連リンクまとめたら、自分がどれだけ不満に思っていたのかも明らかに。 この場があって本当に良かった。
以下、拍手お礼: C様、いつもありがとうございます。 随分お待たせしてしまってすみません。 ダラダラ続きますが、どうぞお付き合い下さい。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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