※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 旧拍手文です。 1
「日本に帰国しようと思う」 旅行用品を買いに行って、たまたま会ったナポレオンに岬が漏らしたのが、きっかけだった。それも、バスが出る間の会話に過ぎない。ピエールやもっと親しい相手なら、言えなかったに違いないが、ナポレオンは静かに話す岬を見返した。 「ふーん、それで?」 「それだけ」 元より、お互いに関する関心は低い。岬にしてみれば、いつものように、川にその思いを投げるような気持ちでしかなかった。 「だろうな」 ナポレオンも、それほど感銘を受けた様子もなく、バスが見えたところで、会話を終えた。
だから、次の日に、天下のエル・シド・ピエールが姿を見せたことは、岬にとって大誤算だった。 「ナポレオンから話は聞いた」 ピエールの口調からして、岬の言葉の行間までも伝わっているのは明らかだった。 聞いていないフリしてたくせに、と岬はナポレオンに憤ったが、後の祭りだった。 「お父さんに迷惑をかけたくない、というのなら自立したらどうだ?」 「ピエール!?」 おぼっちゃんと思っていた相手の思わぬ正論に、岬は目を見開く。 「ここに、うちの養成所のテストの案内を預かっている。君は15歳。今なら、ここに入って、プロを目指すことが可能だ。奨学金制度もある。そうなれば、お父さんに迷惑をかけずに済む」 滔々と述べるピエールに、岬は頭を殴られたような衝撃を受けた。 確かに、自分がいなくても、父親は問題ない。元々一人でいることを嫌う性格ではないし、岬がいなければ、むしろもっと身軽になるだろう。 「君は父親を理由に逃げているんだよ。挑戦してダメだったなんて、君のプライドが許さないからね」 獣の目をして、ピエールの言葉は岬の心を切り裂く。だが、岬はそれを遮らなかった。いつか、誰かに言われることを覚悟していたのかも知れない。環境には恵まれていないが、才能に恵まれている。岬に対する認識はそうだった。それを、甘えだと看破される時が来たのだ。 「俺を失望させるなよ」 ピエールの言葉が、自分を高く評価してのものだと岬は理解していた。心は反発するが、頭はピエールの洞察が正しいことを知っている。 「…分かったよ。受けてダメなら、君だって諦めがつくよね」 「お前を見つけられないような国なら、俺が見離してやる」 ピエールの言葉に、かつてなかった強さを感じて、岬は覚悟を決めた。彼に火を点け、そこまで渇望させたのは岬なのだ。 「その挑戦受けるよ」 炎は燃え移った。ピエールは一瞬にして、それを悟った。
(つづく)
拍手ありがとうございます。 個人的な願望、だったので拍手にしたのが、思ったよりも評判が良かったので、こちらに持って来ました。 どうぞ、寛大な心でご覧下さい。
ちなみに、現在の拍手お礼文は、以前の1日限定拍手を置いています。(新しいのを書く時間なかったので)
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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