※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「今日は泊まれるのか?」 若林くんの声は静かだけど、込められた熱が、じんわりと胸にしみる。 「うん、大丈夫」 軽く答えたけど、すごく決心した上でのことだった。
前に来た時も、同じように聞かれた。 「もちろんだよ。泊めてくれるよね?」 恋人になって、と言われて随分経った。良いよ、と言ってしまってからは、まだそんなに経っていない。久しぶりに遊びに行った僕を腕に包み込み、若林くんは嬉しそうに笑った。 「お前を全部欲しい」 耳元で囁かれて、嫌な気はしなかった。むしろ、くすぐったいような甘さが満ちたのに、でも若林くんの表情に僅かに残った緊張に、つい怖くなった。 「・・・まだ怖いか?」 誰かのものになったことなんかなかった。いつかは離れることになるのも分かっていた。でも、それを分かった上で、抱かれる覚悟まではなかったんだ。 尋ねる若林くんに、僕は黙って頷いた。若林くんはそうか、と呟いて、僕を抱き上げた。 「じゃあ、何もしない。一緒に寝ようぜ」 紳士的、とは程遠いお誘いだったけれど、僕は従った。
きっと、僕を捕まえていた腕の心地よさのせいに違いない。
そして、その時若林くんはちゃんと約束を守ってくれた。何もしないで、抱きしめられた。すごく熱くて、苦しくて、でも、もっと好きになった。これ以上好きになったら、膨れ上がった気持ちは、僕の中には収まり切れないくらい。
何が怖いのか分かった気がした。
これ以上好きになること。戻れないこと。
そして、再び訪れた僕に、若林くんは笑っていない。 「泊まりに来てくれたってことは、どんなことがあっても覚悟はできてるな」 冗談めかして言いながら、若林くんの目は僕を捉えたまま、逃がしてくれそうにない。 「そこまでは・・・」 つい逃げそうになった僕の口を、若林くんはさっと塞いだ。大きな手が背中にまわる。ぐっと抱き寄せられて、厚い胸が押し付けられる。
「じゃあ、今覚悟しろ」 すっと細められた目が、僕を捕らえる。強い力じゃないのに払いのけられないのは、その視線が、表情が、僕を押さえ付けているからだった。
覚悟ならできている。そうじゃなけりゃ来なかった。
僕は顔を上げて、若林くんを見返した。 「君こそ、覚悟できてるの?」 僕は、意地っ張りで素直じゃない。そして多分嫉妬深くて、心が狭い。そんな僕で良いの?
若林くんは僕と目を合わせた。それから小さく肩を揺らした。 「岬、お前身構え過ぎ」 肩を掴まれ、抱き寄せられた拍子に、頭の上で笑い声がする。 「そんなことないよっ」 躍起になって言い返したけれど、すぐおかしくなって、笑いが止まらなくなる。確かに身構えてはいたと思うけど・・・、雰囲気だいなしだよ? 「そういうところも可愛いぜ」 気がついたら、そのまま抱き込まれていた。お互い笑顔のままで、触れ合う肌の熱さだけが、いつもと違う。 「はいはい」 冗談っぽいやりとりのまま、目を閉じる。
結局どんな時も安心してしまえるんだ、君の側は。
温かい唇の感触が額に触れ、僕は心地好い敗北に身を委ねた。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 途中まで書きかけたのが見つかったのですが・・・どう続けるつもりだったのか分かりません。1年前の自分に殴られそうです。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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