※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 チームの奴らが友達の恋人を取ったとか取られたとか騒いでいるのを見て、呆れたことがある。 サッカーに忙しくて、恋愛ごときにそんなエネルギーを使う気持ちが、理解できなかったのも、たかが恋愛と見下す気持ちもあった。 何より、誰と付き合おうがたいした違いはない。友達の代わりも恋人の代わりもいるだろう、とその時は思っていた。
そんな時に、俺は思わぬ相手と再会した。 三年前に、少しだけチームメイトだった、ざっとそれだけの間柄に過ぎない、はずが、会った途端に、そいつの顔を見る度、何故か落ち着かなかったことを思い出した。 そう話したこともないのに、耳に残って仕方ないかった声を思い出した。 「変わらないね、若林くんは」 そいつ、岬は笑って俺の隣を歩く。ただそれだけなのに、落ち着かなくなる。 そんなに親しかった訳でもないのに、どうしてこいつは俺に会いに来た? 意識し始めると、相変わらず可愛い顔や優しい声や、そんなものが気になった。じっとしていられないような高揚感があるのに、そのままずっと見ていたい気持ちで心が乱される。落ち着かない。 何であいつじゃなきゃダメなのかとも思う。確かに今まで見た誰とも違う、不思議な目をしていた。寂しいのか寂しくないのか、気になった。
「なあ、岬」 ともすると、上擦りそうな声を、できるだけ抑えて発する。 「なあに?」 ソファーの俺の定位置の隣に、ちょこんと腰掛けた岬は、重ねられた手に、不思議そうに首を傾げる。 あの時は、こんなに近くで話すことなどなかった。何に隔てられていた訳でもないのに、ほとんど話したことはなかった。岬が俺に話しかけて来たことはなく、俺は誰かに話しかける性格でもなかった。 「お前、俺のこと好きか?」 絡めた指先に、岬は俺を見上げた。 「うん、好きだよ。どうしたの?」 自信はあった。何とも思っていないのなら、ここまで会いに来るだろうか。 岬は優しいし、友達も多いが、一人でも平気そうな印象があった。友達と呼ぶのも怪しい相手を、感傷的に訪ねる性格でもない。だから、好意はあるのだと思った。 まさか、挨拶でもするかの調子ではぐらかされるとは思わなかった。 「そういう意味じゃない」 細い指を辿って、細い手首を掴んで、掴まえてやろうかとも思った。岬らしい逃げ方だ。 「じゃあ、どういう意味?」 挑むように投げかけられた言葉に誘われ、噛み付くように唇を奪った。盗み見ていたよりも柔らかい感触に、自分がしたことを再認識する。それ以上に、好きだという気持ちに押し潰される。 「やめてよ」 返される抵抗に、かえって相手は岬だと認識した。今まで抗われたことなどなかった。 腕を掴んで、もう一度、今度は深く口づける。見開かれた目が、虚空をあおいだまま潤む。 どんどん姿勢を傾けていったおかげで、岬の手が俺を掴む。泣きそうだった表情が蕩けるまで、それでも許さなかった。
(つづく)
拍手ありがとうございます。 2日小ネタをやり、その間に目次を整理しました。 相変わらず自分の書きたいものを気が向いたように書いています。そして、これからもそうだろうと思います。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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