※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 4
ソファーのひじ掛けに半ばもたれながら、岬は黙って聞いている。ソファーの前に立ち、弁明する若林に、岬は時々目を上げる。 「殴っても蹴っても良いし、土下座だってする。だから絶交だけはしないで欲しい」 それは脅迫だと岬は思う。それでも許せない、ではまるで自分の方が悪いようだ。 「やめてよ。・・・でも、もうここには来ない」 静かだが断固とした口調で言い切った岬に、頭を殴られたような気分がした。覚悟をしていたとはいえ、若林には重い事実だった。テーブルには、まだ岬のカップとソーサーが残っている。後悔することの少ない若林ではあるが、どうして耐えられなかったんだと、岬の感情を隠した顔に自責の念を抱く。
最初は岬が来てくれるだけで嬉しかった。好きだと気付くまでそう時間はかからず、気付いたら、岬しか見えなくなっていた。 好きだ、付き合ってくれ、愛している。何度言ったかも分からないが、岬はその度に首を横に振った。君のことが嫌いな訳じゃないんだ。ただ、誰とも付き合いたくはない。心の中で納得がいってなかったのだろう。嫌いじゃないという言葉も盲信してしまっていた。
もし、許して貰えるなら、友達からやり直したい。他愛のない話をして、一緒に食事をして、時々サッカーをして。
「責任は僕にもある。君をはっきり拒絶しなかったし・・・」 言葉を濁す岬に、若林は慌てて口を開く。岬に責任を感じさせる訳にはいかない。 「ストップ、そういう関係でも構わないと言ったのも俺だし、俺の一方的な行為だ。お前が責任を感じることはない」 「ううん、だから責任とかはなしにして、会うのはやめよう。お互い気まずいだろうし」 ごく事務的に言って、岬は拒絶ではなく、壁を築こうとする。 「それは嫌だ」 「え!?」 岬は思わず顔を上げ、若林を見返した。こうなったのに、不思議に恐い気持ちはない。この曖昧で甘い関係を絶ち切らなければならないという焦りと痛みが、勝ちすぎている。 「俺は気まずくない」 岬は常々、洞察力や直感力で若林に劣ると思っていた。論理的思考やバランス感覚では岬の方が長けているが、例えば言葉の裏の感情は見抜かれてしまう。 ・・・今もそうだった。本当は、若林のことを責めているのではない。岬が単に距離をおき、遠ざかろうとしていることを、若林は悟っている。 「・・・若林くんは、責任をとるって言ってたけど、どうするつもりだったの?」 手を組み直し、指を堅く組み直して岬は若林を見上げた。 「そりゃ・・・」 嫁に貰って、と言いかけて、若林は気付く。それは岬は怒るはずだ。何の解決にもなっていない。 「俺はお前が好きだ。どうしても、どんな形でもずっと一緒にいたい。もうこんなことはしない」 岬は組み直した指をギュッと握りしめた。
(つづく)
拍手ありがとうございます。次回で終わり。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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