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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
Trick and Treat
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

「…随分本格的だね」
若林を見かけた岬の第一声はそれだった。

 全日本の合宿、リクレーションとして三杉が企画したのは、ハロウィンの仮装だった。取材の日とイベントをぶつける辺りが三杉で、話題作りと高校生のストレス解消の騒乱を一度で済ませてしまおうという合理的思考の結果だった。
 自称実行委員長の三杉は仮装用の衣装を人数分レンタルしていたが、若林はわざわざ取り寄せたようだった。
「確かに若林の奴すごいな」
二人の視線の先では、ホラー映画の怪人な森崎と吸血鬼の若林が談笑している。岬の言う通り、若林の衣装は細部にまでこだわっている。
「だよね。牙も…何だかすごいよ」
松山に相槌を打ちながらも、岬は少し目を逸らす。黒い衣装に黒いマントを身につけた若林は見慣れなくて、落ち着かない。
「こうして見ると、俺は安直だよな」
「…仕方ないよ。僕達は実行委員なんだから。松山はまだマシだろ」
松山は全身タイツに巨大なお化けカボチャの被り物を装着中で、顔も分からない有様だ。一方、岬はアリス風の可愛らしいワンピース姿に身を包んでいる。残りの衣装が二つだけになった時に、三杉が振り当てたのだが、松山には全く異存はなかった。
「松山くんは彼女がいるからね、岬くん、悪いけど」
自前衣装で身を固めた魔法使いの三杉が建て前的な理由を述べたのに対し、松山は全く飾らなかった。
「可愛いな!きっと岬に似合うぜ」
そんな太鼓判はいらない。率直過ぎる松山を少し恨みながら、岬は渋々その衣装を引き受けた。
 とはいえ、松山はともかく、三杉の悪意は感じる。岬の恋人は昨日から合宿に合流していて、三杉はそれをよく分かっているはずだ。
「…恨むよ、三杉くん」
口にしてこぼしたところで、岬は視線の先の会話が終わり、相手に気付かれたことを悟った。まっすぐにこちらに向かって来る若林が近付く前に、松山に倉庫に行くと声をかけて、身を翻す。

 捕まれば、飢えた吸血鬼に襲われるのは必定で。

 アリスさながらに通路を駆ける、はずであったが、2センチのヒールは岬に駆けるという選択肢を許さなかった。廊下を通って、自室に逃げ込む直前、ドアの前で岬は捕まった。
「Trick or Treat?」
手首を掴まれ、閉じたドアに押し付けられて、耳元に囁きを落とされる。二人きりの時だけに投げかけられる甘い響きに、岬は赤くなった顔を上げた。
「…もういたずらは十分だと思うけど」
国際大会が近いとはいえ、海外組がこの時期に参加するのは大変だ。それを引き受けさせるだけの報酬を三杉は用意した、と岬は推測した。それが、今のこの状態で。生贄の乙女役は岬自身。
「さすが岬だな」
見抜かれることは分かっていたのか、若林は動じる様子もない。
「その衣装、俺が選んだんだぜ」
「そうだろうね」
レンタルにしては、サイズの合ったワンピースは疑うまでもない。
「じゃあ、正解したご褒美をくれる?」
普段は中性的な容姿にコンプレックスを抱き、そういう格好をさせられることを嫌がる岬である。それでも岬の意志に反して、可愛いワンピースはよく似合っている。その上、謎解きを成し遂げたことで満足したのか、目を輝かせ、微笑んでくれる以上のご褒美はないと若林は思った。
「ご褒美は吸血鬼からのキスな」
「…ちゃんと甘くしてね」
腕の中で目を閉じた岬に甘いキスを捧げ、吸血鬼は満足そうに微笑んだ。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
ハロウィンなかなか書き終わらなくて、当日になってしまいました。素敵なイラストをいただいて、それに寄せようかとも思ったのですが、それも難しく、虎や狼も出すつもりだったのですが、無理でした。
そして魔法使いさんは生け贄のアリスが無事に帰ってくることを祈っています。…心臓に悪そうなハロウィンです。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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