※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
眠れないで、天井を仰いだまま、枕元に腕を伸ばす。僕がつけた名前が悪いのか、何だか偉そうに鎮座しているぬいぐるみを手にした。
先日、久しぶりに会った時だった。 「岬、よく来てくれたな」 空港で、一段と大きくなったように見える若林くんは、さも当然のように、長い腕を広げて僕を包み込む。 「ちょっ・・・と、若林くん・・・」 堅牢な腕に一度抱き込まれたら、すぐには逃れられない。もがいて腕を立てた胸は、厚くて硬くて、びくともしない。 「恥ずかしいってば・・・」 それでも、思ったより紳士的に解放されて、僕はほっと胸を撫で下ろす。 年々、差が開く。力では絶対に敵わないと分かっているのに、僕は若林くんに会いに来てしまう。 きっと、もう少し抱かれていたら、落ち着かない胸の鼓動まで伝わってしまっていた。 「だって、久しぶりだから、嬉しくてな」 「久しぶりでいちいち抱きつかれたら身がもたないよ」 若林くんだけではないけれど、散々被害に遭った立場からすると、つい苦言を呈したくなる。 スキンシップ好きな友達が多い上、サッカー選手として、体格的なコンプレックスがある僕には、あまり愉快とは言えない。 でも。動悸の収まらない胸を押さえて、そっと息をつく。 「はは、それは言えてるな。でも、それは岬だからだな・・・」 意味の分からないことを口にして笑う若林くんの横顔を眺め、それから手に抱えている荷物に目を移す。 「あ、これプレゼントな」 そうだろうと思ってた。首にリボンを巻いたクマのぬいぐるみは目立っていて、会った時から気になっていた。 「もう、女の子じゃないんだから・・・」 僕のためらいも気にする様子なく、手渡されたぬいぐるみはふかふかで、一瞬抵抗を忘れた。だって、この目の前の逞しくて男らしい若林くんが、どんな顔して買ったのか想像するだけで、怒れなくなっちゃう。 「だって、あまり高いのだと怒るだろ」 これだって、無駄遣いには変わらない。だけど、前に好きだと言っていたのを覚えてくれていて、僕のことを思って選んでくれたのは伝わったから、そのぬいぐるみくんは僕の家のコになった。
「ねえ、若林くん」 抱き上げたクマのぬいぐるみは、僕の作った帽子を被り、つぶらな目で見つめ返す。 「僕は君のことが好きだよ。君は?」 真っ黒でまっすぐな目。見ているだけで酔いそうになるから、いつもはこんなに見つめられない。だから、笑うふりでそらしながら、こっそり見ていた。けれど、いつのまにかそれでは足りない自分に気付く。
ぬいぐるみを抱き締める。腕の中が満たされて、その中が空っぽだと気付く。心に、君が足りない。 「好きだよ」 本当は抱き締められたい。いつかみたいに、君に抱き締められて、満たされたい。
夜はまだ明けない。
(おわり)
お久しぶりです。 腱鞘炎が相変わらずなので、スマホ導入です。 と言っても、まだまだ使い慣れないので、結局携帯の方が早いです。だめだこりゃ。
という訳で、当分ボチボチ更新続きます。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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