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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
家出(8)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
今日で終わり。



 ワンコールも聞かない内に、若林が出た。
「迎えに来い」
どうせ、車で待っているつもりだったに違いないのだ。不釣り合いな車で、山道を攻めて来たのは、聞き慣れないエンジン音で気づいていた。
「すぐ行く」
電話はすぐ切れた。若林は必死で車を走らせているに違いないが、きっと笑っているに違いないと思った。
「岬、もう認めろよ」
何をどう反論されても、負ける気はしなかった。その証拠に、目の前の岬は、もうやつれては見えない。花が水を得たかのように。
「やっぱり、僕・・・」
てんで意気地のないことに、エンジンの音に岬は部屋を出ようとしたが、新田の表情に憮然と座り直した。先輩とはかくも辛いものなのだ。
「焼きが回ったな」
「若島津、口が軽くなったんじゃない?」
そういなす顔は、それでも何とも言えない風情がある。どうやら吹っ切れたらしい、と、すっかり冷めたコーヒーを飲み干した。


「岬っ!!心配したぞ」
ドアをぶち破る勢いで入って来た若林は、俺達など目に入っていない様子で、一目散に岬に向かって行った。そのまま腕を掴んでたぐり寄せ・・・おいおい、人前で何するつもりだ。
「わ、若林くんっ」
慌てる岬の目の前で、若林が両手を合わせる。
「岬、頼むっ戻って来てくれ」
「僕こそ、ごめんね」
若林の合わせた手を、岬は握って下に下ろさせた。
 俺は若林という男をよく知っている。奴がどんなに強くて有能かも知っている。だから、正直、あのやに下がった顔はどうかと思った。
 だが、同時にあんなに幸せそうな顔は見たことがない。
 
 岬の前だと、そういう顔するんだな。

 和解した二人は当然のように寄り添い、微笑み合っていた。二人でいるところを見ることなどなかっただけに、そんな顔をするのか、という衝撃の方が大きかった。見たこともない笑顔で若林が見つめれば、岬は恥じらいを含んだ顔で笑い返す。

 もう勝手にしろ。
 気がついたら、俺は目の前のバカップルを追い出していた。若林は岬を抱き上げての退場で、それこそ、結婚式ばりである。若林はそのまま倒したシートに岬を寝かせた。
「若島津、ありがとう」
二人して頭を下げられたところを、しっしっと手で追い払う。礼を言われる筋合いはない。

 勝手に幸せになりやがれ。

 走り去った車を見送ると、新田がいつの間に買ったのか、コーヒーを寄越した。
「今は違う気分なんだ」
コーヒーを投げ返し、硬貨を入れて、コーラのボタンを押した。

 あの人、どうしてるかな。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
明日からパラレルでファンタジーやります。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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