※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 4 ある意味、Jr.ユース大会の時を思い出す四面楚歌ぶりだった。あの時は、岬は分かってくれていて、こっそりねぎらってくれていたのだから、それ以上とも言える。
俺達のことは、みんなほとんど知らないのだと思っていた。だが、岬に別れ話をした翌日には、何人もの抗議を受けることになった。 岬が話した、とは思わない。普段は人前では俺を見ようとしない岬が、あまり表情のない目で俺を追い、それから我に返ったようにグラウンドに出て、リフティングを始めた。たったそれだけだ。
岬のリフティングはまだ続いている。ほとんど表情を変えずに、淡々とボールを操る姿は、普段よりもずっと頼りなく、今にも折れてしまいそうに見える。汗で張り付くユニフォームを拭うことなく、乱れた髪を整えるでもなく。
それだけ傷は深いのだ。
だが、愛し愛される幸せを味わせた上で岬を独りにする位なら、憎まれて、嫌われて、愛想を尽かされて、俺を捨てて行って欲しかった。
リズミカルな動きで、岬はボールを跳ね上げる。ほとんど定位置を変えることなく、リフティングは続く。
「無言で責められている気がする?」 不意に声をかけられて、振り返った。三杉は他の者とは違い、表面上は愛想よく振る舞っている。本音のところは分からないが。 「背後から近づくな」 つい語気の荒くなる俺に、三杉は人の悪い笑顔で応じた。 「何を思い詰めてるのか知らないけど、寂しいなら素直に謝れば良いのに」 三杉にしては、あまりに直球な攻撃に、思わず窓ガラスに映る自分の顔を見る。表情に出ているという訳ではなさそうだ。 「なあ、三杉」 ここで会ったのが三杉なのは、ある意味天啓のような気がした。 「何だい?」 窓の外の岬の周囲には、いつの間にか人が集まっていた。チームメイトとはいっても、お手本のようなリフティングを常に見られる訳ではない。 あのしなやかな身体は俺のだった。静かにボールを見定めるあの眼差しも、強く結ばれたままの形の良い唇も、俺のだった。 「病気の時に、人を愛するのは、怖くなかったか?」
(つづく)
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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