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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
忘れもの(下)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
昨日の続きです。



「はあ・・もう・・何なのさ」
「はあ・・・す、すまん」
いきなり1キロ以上ダッシュだったのだから、二人とも息は切れていた。岬はドアにもたれて息を整えると「お邪魔します」と言って入って来た。

「まず先に言っておくと」
俺の言葉に岬が頷く。
「俺が好きなのはお前だ」
岬が落としたミネラルウォーターのペットボトルを受ける。岬はきょとんとして、俺を見ている。
「僕?」
「そう、お前」
二の句も継げず、岬は呆気に取られている様子だった。その手を取ると、岬は驚いたように、俺を見た。
「若林くん、僕達再会したばかりだよ」
岬が言うのも無理ない。再会する前には3年間ブランクがある。
「でも、好きなんだ。昔から好きだったし」
小学生時代も岬のことが気になっていた。可愛い顔で、天使のように微笑む癖に、ふとした拍子に見せる顔には陰がある。そんな奴は初めてで、気がついたら、いつも見つめてしまっていた。
 そんな相手がわざわざ訪ねて来てくれた。それで恋に落ちない訳がない。
「何だ・・・てっきり、僕・・・」
安堵したように言う岬の目から、大粒の涙がぽたぽた落ちた。
「あれ・・・僕、どうしたんだろ・・」
目を潤ませたまま、岬が微笑む。

 それは反則だろ。・・・俺が口説くつもりだったんだぞ。

 せわしなく、岬を抱きしめた。まだ止まらない涙を拭い、髪をかきあげて、耳元に唇を寄せる。
「俺はお前が好きなんだぞ」
「・・・うん」
閉じ込めた腕の中で、岬が頷く。側にいるだけでも堪らなかったのに、俺にしっかり掴まって涙を落とす岬には耐えられそうになかった。
「岬、手出して」
出された手の指を伸ばして、その指に指輪を滑らせていく。
「ほら」
岬の指に合うように、買っただけのことはあった。白い細い指を彩る銀の指輪ごと、手を掴む。
「本当だ・・・」
伸ばされたままの手の甲に口づける。岬は慌てて手を引っ込め、俺を見つめた。
「信じたか?」
小さく首を揺らして、岬は頷く。その顔が赤いのは、泣いただけでは決してない。
「岬は?」
我ながら意地悪な質問だと思った。岬はまだ紅を差したような顔で、慌てて顔を背ける。
 その仕種が、やっぱり可愛い。
「好きだよ」
小さな小さな声は、自分の心臓の音でかき消えてしまいそうだった。それでも、聞こえた以上はなかったことになんかできない。
「俺も」
手を伸ばして、岬の手に重ねる。ひんやりした指輪の感触に、遅れた現実感が追いつく。
「岬」
抱きしめた体は、拍子抜けする位軽い。強く抱いたら、壊れるのじゃないかと、不安になるほどに。だが。
「もう離さないぞ」
「いいよ」
腕の中で岬が笑う。岬が動く度に、指輪が光る。
 ほんの数十分の間に、岬は更に可愛くなったように思えるのは、欲目なんだろうか?と首を捻った。


(おわり)


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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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