※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 今日はパラレルで。 1
「面白そうですね」 事務所の社長の説明を一通り聞き、設定資料を見た後、岬は顔を上げて微笑んだ。 「じゃあ、この仕事受けるわよ」 岬は頷く。求められたことを如才なくこなすという点で、岬は年齢以上の技能を持つ。
岬は子役モデルの中でも、アイドル的な存在である。CMやグラビアでの印象から、笑顔の天使という愛称で知られるが、ドラマにはまだ出たことはない。 その彼への初オファーが、サッカーマンガを現在とするドラマだった。 岬の役柄は、主人公の天才サッカー少年の親友となる少年だ。子供の頃から、画家の父と二人、全国を旅してまわっているという特異なキャラクターで、誰とでも仲良くなる笑顔の持ち主である。笑顔という共通する特徴から、岬が選ばれたのは間違いない。
「・・・辛いかも」 初顔合わせで、楽屋の挨拶まわりを済ませた帰りに、つい口から出た言葉だった。岬自身、父子家庭で、託児所代わりにこの事務所に預けられた。幼い頃からモデル生活で、アルバムは持っていないのに、岬の写真は膨大に存在する。 私生活とオーバーラップする部分が多いだけに、不安は拭えない。 誰にも聞かれなかったことに安堵して、岬は控室に戻ろうとした。
「岬だ!」 「本当だ!すげえ本物だぜ!」 どうやら共演する仲間らしい。岬が笑顔でやり過ごそうとした時、はっきりとした声が廊下に響いた。 「あまり騒ぐな。迷惑だろうが」 同い年のはずなのに、と岬は声の主を伺う。有名な俳優一家の息子で、子役の若林がそこにいた。今回は主人公のライバルから親友になる役を演じるのだが・・・そこにいるだけで、存在感が際立っている。 「悪かったな」 「ううん。気遣ってくれてありがとう」 いつものように微笑む岬に、若林の仲間がどよめく。そして、当の若林も岬に歩み寄った。 「そんなにいつも笑っていたら疲れないか?」
岬にとって、笑顔でいることは仕事以上に、自衛本能である。 託児所に預けられる前に、スカウトされていなければ、託児所や保育園に預けられてばかりだったに違いない。空き時間も面倒を見てくれるアットホームな事務所だったことも、岬には幸いした。 「大丈夫だよ」 いわば、キャリア10年強の笑顔。それを看破されたのは初めてだった。岬は笑顔で答えながら、若林を奇異な目で見た。 「さっき辛いって言わなかったか?」 すっと頬に伸ばされた手に、岬が怪訝な顔をする。 「無理して笑うなよ」 そのまま、滑らかな頬を撫でて、若林は立ち去った。
(つづく)
拍手ありがとうございます。 同じ時期に書いたものは、どこか同じ話が多いです。ですので、可能なら違う時期のものを、と以前に書いたものを引っ張りだしたり・・・。そうやって時期がずれる訳です(笑)。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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