※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 携帯のコールが鳴って、数回で出る。画面表示を見るまでもない。 「もしもし」 我ながら弾む声を、意識して抑える。 「もしもし」 あ、やっぱり。声を聞いて、案の定鼓動が跳ね上がる。耳の鼓膜を通じて、心ごと簡単に揺すぶられてしまう。 「手紙、ありがとうな。そっちはもう春だな」 若林くんのいるドイツは、日本より春の訪れが遅い。 「北海道と同じ位だ」 って、前に言われた。そりゃ緯度的にはそんなものだけど、松山に怒られるよ? 「ううん、返事遅れてごめん。こっちが春だなんてよく分かったね?」 春らしいことを書いた覚えはなかった。確かに、もう4月。新入生のクラブ勧誘があって、練習する頃には、みんなヘトヘトだった、そんな話題は春らしくはあるけれど。 「封筒開けたら、桜の花びらが挟まっててさ」 いかにも可笑しそうに、電話口で響く笑い声。遠く離れているのに、楽しそうな顔が目に浮かぶ。 「校門前で活動してたから、髪にくっついてたんだね。桜吹雪すごかったし」 風で桜が舞い上がる。春の暖かい風に、桜の花びらも嬉しそうに、まるで踊っているかのようだった。 「こっちなんか、こないだまで雪だぜ」 若林くんのいる国は本当に寒い。 寒くても、キーパーは手の感覚を失えない。グローブの中の指を動かし、試合を見て、一緒足りとも気を緩めることは出来ない。 それを聞いた時、思わず若林くんの手をこすった。少しでも暖められたら、と思った僕の手を逆に握りしめて、若林くんはありがとうな、と微笑んだ。 「早く春が来てくれると良いね」 何気ない相槌に、若林くんは、一瞬おいてから、静かに言った。 「ああ。岬と話しているだけで、春が来たような気分になるけどな」 優しい囁きに、僕もそんな気持ちになる。暖かくて、心がむずむずして、何だか嬉しい、春のような気持ち。誰かを好きになることって、こういうことなのかな。 「花びらも入ってたしな」 「桜の写真も送れば良かったね」 あの日舞っていた、淡い色の、きれいな花びらを思い出す。あの時も本当は一緒に見たかった。 「良いぜ。この花びら、髪の毛から取ってやったつもりにしておくから」 「っもう、何だよ、それ」 顔が見えないのを、思わず感謝する。すっかり火照ってしまった顔に、右手を当てて、少し冷ます。 春の風に翻弄される花びらのように、僕の心は君の掌の中。 「・・・でも、一緒に見たかったよ」 目を閉じて、呟いた。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 いつも季節感のない拙宅ですが、桜の季節はついつられてしまいます。 先日のお昼休み、桜の下で携帯で打っていると、バッグに花びらが。単純ですみません。
以下、拍手お礼:
まひまひ様、リクエストありがとうございました。 同じ星を別々に見る、というのはよくある話ですが、源岬に当てはまるとは思いませんでした。素敵なリクエストをありがとうございました。少しでも気に入って頂けたら、嬉しいです。
拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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