※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 南葛SCの合宿。へとへとになるまで練習したはずが、夜中には、監督やコーチ達の目を盗んで、ほぼ全員が揃っていた。山の中腹の、少し開けた場所の施設。少し開けた場所で、密談が始まる。 「ここの川、蟹が穫れるらしいぜ」 「へえ」 「ここって、他の動物とかは出ないのかな」 がやがや騒ぐ連中の横、ふと気づくと岬が空を見上げていた。 「どうかしたのか?」 ちょっと山の方にある市の施設だから、照明がある訳でもない。顔なんてほとんど見えないのに、岬だと分かった。 「その声は若林くん?よく見えるね」 「ああ、目は良いんだ」 目を凝らすまでもなく、岬は微笑んでいるような気がした。はっきり見えなくても、その表情は想像できた。 「星、きれいだよね」 言われて、空を見上げると、一面の夜空を飾る、すごい数の星が輝いていた。 「・・・何だ、これ」 ぽつんぽつん、と数えられるいつもの夜空とはレベルが違っていた。どこを見ても星が並び、それこそ降るような満天の星空。 「吸い込まれそうだよね」 静かさに、周りを見渡すと、いつの間にか二人になっていたらしい。岬は相変わらず空を見上げている。 「何か、星がありすぎて、よく分からないな」 理科で習ったはずだが、その知識も役に立ちそうにない。岬は俺の横で、手を伸ばした。 「あれ、カシオペア座じゃない?」 「どれ?」 暗くて、すぐ隣の岬の指先も見えない。岬は、俺の手を掴んで、Wの形に星をたどった。 「ホントだな。あっちに北斗七星あるもんな」 こんなに岬とくっついたのは初めてだった。くっついた拍子に、岬の髪がふんわりと香り、ドキドキした。 「カシオペア座は沈まないんだよね」 「そうそう、時間が経つとMになるんだよな」 ふと、WとMって、俺と岬のイニシャルだと取り留めのないことを考えた。その間に、岬はケフェウスや、夏の大三角を見つけては教えてくれる。重ねられた手を通して、岬の体温が伝わってくる。闇の中、木々が他の物音を飲み込んだみたいに、岬の声だけが響いている。 「岬は星、詳しいんだな」 「うん。日本中、どこに行っても、同じ星が見えるから」 顔が見えないだけに、いつもは隠している悲しみまで、声ににじんでいるように聞こえた。 「そうか。じゃあ、お前が転校しても、同じ星が見られるんだな」 重ねられた手を、握り返した。いつか、岬が転校して行くことは分かっていた。岬の事情は、岬自身は話さなくても、見上さんはじめ、多くの大人が憂慮して話していたから、自然に耳に入った。 「・・・若林くん」 表情どころか、顔も見えない星明かりの下で、岬が小さな声を出す。腕をたぐって、見えないまま、岬を抱きしめた。 「僕、大丈夫だから」 大丈夫そうには聞こえない弱々しい声で、岬が呟く。 「俺はしたいことをしているだけだ」 囁き返す言葉も、岬の他は星しか知らない。
ドイツに移ってからも、俺は時々夜空を見上げる。日本とは時差はあるが、北の空のメンバーはそう変わらない。 岬も、この星を見上げているのかな?時々そんなことを思った。俺らしくない感傷ではあったが、同じ星を見つめていると、ずっとつながっていられるような気がした。
同じヨーロッパ、同じ時間に同じことを思って、岬が空を見上げているとは、その時の 俺は知らずにいた。
(つづく)
拍手ありがとうございます。 星空の話です。ハンブルクは北半球で、日本よりも緯度が高いので、北極星の高度が高いです。 ですので、北の空の星はちゃんと見えるはず。手元に、早見表がないので、正確さは欠いております。
以下、拍手お礼: さくら様、いつもありがとうございます。 無事、帰ってまいりました!いや、スイッチ入るまでは辛かったんですが、スイッチ入った後は・・・。 おかげで、先週末は反動でガタが来ておりました(笑)。 桜の話は、お花見に行った時に、同僚と話しながら妄想を。桜背景の岬くんを想像して、危うく人前でにやつくところでした・・・。後で、メールもさせて頂きますね。
拍手のみの方もありがとうございました。励みになります。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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