※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 ドイツを訪ねて来た岬を引き留めて、家に泊めることになった。せっかくだからと夕食をおごり、家に帰る頃にはもう外は暗くなっていた。空を飾り始めた星に、岬が微笑む。 「あの時みたいだね」 たった二人で、星を見上げた。あの時は、岬の表情は見えなかった。だから、余計に抱きしめたくなった。・・・あの頃から、きっと俺は。 「ああ。カシオペア座、分かるぞ」 「そうだね。よく見える」 手を導かれるまでもなく、すぐに分かった。時々こうやって、カシオペア座を探していたのだから。そして、岬の表情も分かる。静かに星を見上げる横顔は、街灯の明かりでも白く、際立って見える。 「パリはここほど、きれいな星空じゃないけど・・・星を見ると、若林くんを思い出したよ」 木々に切り取られた空を見上げたまま、岬はしみじみと言う。 「俺も。ちょうどMだしな」 今日のカシオペア座は、下を向いて、Mを象っている。俺の気持ちを見透かすように、岬のイニシャル。 「本当?」 疑わしそうに、でも優しい口調で岬が軽口を叩く。 「本当。岬に会いたいって、星にお祈りしてた」 「何だよ、それ」 クスクス笑う岬の手に、そっと手を伸ばす。星を見る度、お前の見る空が青空であるように、優しく包んでくれる星空であるように、いつも願っていた。 「あっちがペガススで、アンドロメダ、ペルセウスだ」 掴んだ手を、星座の形に導いていく。 「すごい。本当に星見てたんだ」 「そう。岬と一緒なら良いのになって」 掴んでいた岬の指先に、力が入る。電流が走ったかのように、びくっと身を震わせた岬に、こちらもかえって意識してしまった。
サッカーをする時、星を見る時。
つい岬を思い出していた。
3年前と同じではない。岬を案じて、星空を見上げる度、心の中に面影が蘇った。 闇の中では抱きしめられていた岬が、少し明るいところに出た途端、先を歩き出した。 「行こう、若林くん」 先を歩く岬は、にこやかに振り返った。いつのまに拭ったのか涙の跡すら残っていない。強がっている背中が可愛くて、また抱きしめたくなったのを覚えている。星の光が、何万光年の距離を経て届くように、離れた想いは知らぬ間に積もり、募っていて、時を経て俺の心に、点った。
「岬」 「ん?」 岬とまた星空を眺める。同じサッカー、同じ星空。また出会うことを夢見なかったと言えば、嘘になる。 「会いたかったぜ」 腕を伸ばす。あの時と同じように、岬は俺の腕の中にすっぽりと収まってしまう。あの時は慰めたい気持ちが勝っていた。けれど、今は。 「好きだ」 言葉にすると、その重さに驚かされた。改めて、自分でも実感してしまう。 「僕も」 夜の静けさを乱さない、透き通る声で岬が応えた。あの時は震えて頼りなかったのに、今日の岬は微笑んでいる気がした。
二人で手を繋ぎ、見上げた夜空は、星々が祝福するように煌めいていた。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 今回はまひまひ様のリクエストで、星の下のお話です。ロマンティック・・・になったかどうか。 地学部~天文同好会の経歴持ちの私には余裕のリクエスト、のはずだったのですが、知っているのと書けるのは大違いでした。 でも、楽しく書かせていただきました。まひまひ様、リクエストありがとうございました。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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