※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 そうして、俺は岬と暮らし始めた。岬がどこから連れて来られたのかは分からないが、身寄りがないというのは本当らしかったし、それ以上のことは岬が話すのを拒んだ。よく知らない相手と暮らすというのは奇妙なことだが、岬は知らない相手、ではなかった。一緒にいるだけで、心を揺さぶられる、不思議な相手だった。 それに、岬は同居人としてもこの上なかった。可愛いだけでなく、気立てがよく、家事全般をこなした。岬の作ってくれる和食は旨くて、笑顔で迎えられるのは嬉しかった。 「お帰りなさい。今日は暑かったんじゃない?」 玄関で微笑む岬の肩を抱いて、顔をのぞき込む。 「岬、それよりお帰りのキスは?」 バラのつぼみのような、柔らかい唇を指先でつつくと、岬は顔を真っ赤にして恥じらう。 「そんなのできないったら・・・」 その初心な反応がいちいち新鮮で、少し膨れている様子さえ可愛くて、つい目を奪われてしまう。
岬に触れたい。
想いは日毎募る。しかし、シュナイダーの残した言葉が、抜けないとげのように、ちくりと胸を刺す。 「蘇生」
だが、禁止されればされるほど、かえって意識してしまうものだ。
岬は毎日俺の隣で眠る。俺の選んだパジャマで、同じシャンプーを使っているはずなのに、岬の髪は甘く香った。まるで誘うように。
岬と眠る夜は幸せなはずなのに、いつも不安になった。丑三刻、あの悪魔の現れた時間。いつか、この手のぬくもりも、幸せも、消えてしまうんじゃないか。
岬は、恥ずかしがりながらも、俺の手を拒まない。髪を撫でると、くすぐったそうに笑う。心を許してくれてはいる。だが、それ以上は触れることはできない。
岬と過ごした時間が増える度、岬への想いも積み重なっていく。 岬の細い首、しなやかな背中。日に日に、触れたい部分は増えていく。 だが、シュナイダーの言葉に、繊細な姿もあいまって、まるで触れたら散る花や、触れたら壊れるガラス細工の人形のように、もし触れたとしたら、岬はたちまち消えてしまうんじゃないか。
でも、キスもやめられなかった。唇が触れるほんの一瞬まえに、岬は目を閉じる。俺を信じて閉じられる目。同じく目を閉じている顔でも、最初に見た時とは、どこか違って見えた。開花を待つように、ほんの少しほころびて見える唇に、毎日少しずつ幸せになっていた。これが、失われる?
岬のことは全部ほしい。だが、岬を失うかも知れないと思うと、怖かった。ほんの少し前まで、怖いものなどなかったのが、まるで嘘のようだ。 岬との、まるでままごとのような生活は、俺をすっかり臆病に変えた。
「明日は何が食べたい?」 夕飯をたいらげた後、一緒に片付けをした。リビングのソファーでくつろぎながら、岬は俺の買ってきたマグカップを傾ける。岬の物が増えるだけで、岬の存在が確実になっていく気がして、あれから食器も随分増やした。 俺の選んだ服は、岬によく似合った。 「お前」 つい言ってしまった。岬は少しだけきょとん、とした後、にっこりと笑った。 「僕?」 その笑顔ときたら魅惑的で、心底欲しいと思った。 「冗談だ」 くすくす楽しげに笑う唇を見ると、俺まで気持ちが高揚する。そのまま奪った。細い身体に手をまわして、抱いて。 「もう、くすぐったいってば」 くすぐったそうに身をよじり、笑う顔がたまらなく可愛い。キスだけじゃとても足りない。 耐えられなくなる前に、ベクトルを変えようと思った。ソファーに押しつけた岬をくすぐる。 「や・・あっは」 甘い声が、耳に響く。敏感なのか、激しく笑う岬の肌は、全体的に桜色に染まっていく。特にかわいらしく染まった耳たぶに唇を近づけた。耳朶を甘噛む。 「っひゃあっ」 岬の身体が跳ねた。声が上がる。岬の声は何て、心地いいんだろう。どくどく、と血が逆流する気がした。もう、だめだ。 「岬」 「え?」 岬は俺の声が変わったのに気づいたのか、耳元で囁かれて、身体を堅くした。 その反応が、俺の心に火をつけた。見下ろす体勢のまま、シャツのボタンを一つ外した。細い首筋に唇を滑らせて吸うと、白い喉が震えた。 「や・・・」 こぼれた声は甘い。切なそうに俺を見つめる瞳も。 「だめ・・だ・・よ」 いつもなら、合図のような岬の言葉で、思いとどまった。岬がどれくらい事情を知っているかは分からないが、その事については知らないと断言できた。 合図を聞いても、俺は手を止めなかった。いつも口にする「嫌なら言えよ」という言葉すら告げず、俺は岬の首筋に顔を埋めた。
(つづく)
拍手ありがとうございます。 昨夜は夜桜見物に。おかげで今日一日眠くて眠くて。 桜ネタと星の話と、パラレル3つ書いていますが、とにかくこれから終わらせないと。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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