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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
Geil Faust(3)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

 暖かい。滑らかな肌には、傷一つない。シュナイダーは確かにあの時、蘇生させた、と言った。・・・これが死人だなんて。
 しばらく抱いていると、岬の震えは次第に収まり、やがて静かな寝息に変わった。腕に柔らかい、無防備な体が預けられる感覚に、少し安心した途端、それが失われる恐怖が生まれた。
 突然俺の前に現れたのと同じように、突然消えてしまったら。暗闇を不意にのぞき込んでしまったような、言い知れぬ感情が胸を寒くした。こんなに暖かい存在が腕の中にあるのに。

「眠れないの?」
声をかけられて、岬が目を開けていることに気づいた。まさか、お前のことで悩んでいるとは言えずに、首を振った。
「ごめんね、窮屈じゃない?」
こっちで見かける、美人の笑顔とは違い、岬の笑顔は攻撃性を持たない。細やかな気遣いで包まれた、優しさを感じさせてくれる。
「岬、キスして良い?」
「え?」
少し間を置いて聞き返された。岬は大きな目を不思議そうに瞬かせる。
「キスしたい」
言ったのが早かったのか、唇が触れたのが早かったのか、唇が触れた瞬間、岬はびくっと体をすくめたものの、それは単に驚いた反応のように思えた。さっきのような、根元的な震えではない。ただ、キスに慣れていないのだろうな、と感じさせた。
 仕方なく、今日はお行儀の良いキスに留めて、それ以上は控えた。抱き込まれた腕の中で、岬は真っ赤になった顔を押さえながら、それでもすぐに眠りについた。

 次の朝、良い香りで目が覚めた。いつもはエアコンをつけなければ肌寒い部屋も暖かい。だが、腕の中に閉じこめていたはずの岬の存在はなかった。スリッパもひっかけて、慌てて起き出した先、キッチンで岬と顔を合わせた。
「おはよう、若林くん」
朝の光の中で微笑む岬を、すぐに抱きしめた。
「な、何?」
「・・・夢じゃないんだな、と思って」
「うん」
言葉少なに頷く岬に、たまらなくなって頬に口づけた。


「行ってらっしゃい」
玄関まで、岬は見送りに来てくれた。
「行ってらっしゃいのキスは?」
「え?」
されるのに抵抗があるのなら、してもらおうと思った。岬は困ったように一つため息をついて、頬に優しく唇を当てた。
 誰かの作った飯を食って、見送られながら家を出る。他の奴にしたら、当たり前かも知れないことが、幸せだと知った朝だった。

 その日一日、気もそぞろに過ごした。早く帰りたい。岬はいるだろうか。それとも。自称大悪魔のシュナイダーのことを完全に信じた訳ではない。岬もあんな純情そうな、あどけない顔をして、実は盗賊団の一員で、家に帰ったら何も残っていないかも知れない。そんな想像で気を紛らわせてしまいたくなる位、実は恐れていた。

 俺が帰ったら、岬だけが消えていたら。

 朝、目が覚めた時に、腕の中が空虚に感じた。今まで誰を抱いて眠ったことなどなかったのに。

 練習が終わった途端、一目散にグラウンドを出た。試合の日でなかったのが幸いだ。もし、試合なら、ザル呼ばわりされて、おろされていたに違いない。
 まっすぐに家に帰るつもりだったが、大通りを通った時に、ふと店先に並ぶ品物に目がいった。岬の好みは分からない。だから、甘そうなものも、辛そうなものも、目に付いたものを買った。

 出かけた時と同じように、玄関のドアは鍵がかかっていた。鍵を開けて、ドアを開けて、ふと気づいた。靴一つ置かれていない玄関。人の気配はしない。血の気の下がってくるのを感じた。慌てて台所に向かう。おいしそうな匂いはしているが、そこにも岬はいない。買ったものを置き、それから廊下に飛び出すと、そこには岬が立っていた。
「お帰りなさい。ごめんね、お風呂掃除してたから」
上着の袖と、ズボンの裾をまくり上げた岬に、覆い被さるように掴まった。
「どうしたの、若林くん」
もたれ掛かられた岬が慌てる。でも、離したくはなかった。
「風呂掃除は終わったのか?」
「うん。だから、テーブルの用意をしようと思って」
困ったように、言葉を切った岬を解放して、そのままキッチンに連れて行く。手を引っ張られた岬はおとなしく従う。袖をまくったままの手は、日に焼けたことがないように白い。ボールを扱い、荒れた俺の手とは随分違う、細くて長い指に、指を絡めた。

「うわぁ、どうしたの、これ」
岬はキッチンのワゴンに鎮座する食べ物に感嘆の声を上げた。パンやケーキや果物の他に、おすすめの店のソーセージなんかも買って来てある。
「岬の好きな物が分からなかったから」
「・・・無駄遣いしちゃだめだよ。でも、ありがとう」
戸惑ったように、そっと笑う様子が、可愛くて仕方なかった。
「それと、手出して」
「なあに?」
差し出された手に、取り出したマグカップを乗せた。一番最初に買ってやりたくなったものだった。落ち着いた色合いの、オーソドックスな形のものだが、軽くてしっかりしている。
「もらって良いの?」
岬が微笑む。そんなに可愛い顔を見せられたら・・・何でもしてやりたくなる。

(つづく)

拍手ありがとうございます。

かなり変なパラレルです。
まだ、続きます。すみません。

ハイ状態が止まりません。
ポメラまで買ってしまった・・・。どんだけやる気なんでしょうか、私。


以下、拍手お礼:

ゆかり様、いつもありがとうございます。
無理はしないように、頑張って更新はしたいものです。
楽しんで頂けると嬉しいです。


甘槻様、メッセージありがとうございます。
おかげさまで、気持ちはすっかり持ち直しました。
少しでも楽しんで頂けるよう、頑張りたいと思います。


なお様、いつもお世話になっております。
お迎えありがとうございます!嬉しいです。
すごい勢いで立ち直ってしまい、自分でも呆れております。
質はともあれ、書きたいことがまだまだあるようです。
今後ともよろしくお願いいたします。
そして、どんな形であれ、バックアップだけは・・・。(しつこいですね)


拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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