※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 夜中、異様な気配で目が覚めた。
闇の中目を凝らすと、黒い影をまとい、金髪の男が立っていた。 「ハンブルクのワカバヤシだな?」 「ああ」 夜中に、部屋に不審な奴がいるのは気になったが、聞かれたことには間違いなかったので、とりあえず返事をした。 ハンブルクに来て、チームの正GKに上り詰め、今やヨーロッパNo.1キーパーの呼び声も高い俺だ。夜中に黒づくめのストーカー位そう不思議でもない。幸い腕には自信がある。目の前の男も体格は良いが、そう簡単には負けはしない。 「何の用だ?警察を呼ぼうか?」 「・・・驚いたな。この大悪魔シュナイダー様を前に、少しも動じないとはな」 黒づくめ 男が黒いマントを捌く。再び翻した後には、金髪をかきわけるように、象徴的な長い角が聳えていた。 手品師のストーカーでなければ、夢に違いない。呆れてケットを被ろうとした俺に、自称悪魔が立ちはだかった。長い指を突き出し、尊大な表情で睨みつけている。 「俺と勝負しろ」 「はあ?」 呼ぶのは警察ではなく、病院だったか。携帯を取り出しかけた俺に、自称悪魔が手を振る。虚空からその空間に姿を現したのは、サッカーボールだった。
神も悪魔も信じない俺だが、目の前でボールを出現させられたら、少しは信じないわけにはいかなかった。悪魔は呆然とする俺の前でボールを軽く放り上げ、そのまま膝に流した。 確かに、なかなかの腕前だ。こうして挑戦してくるのも、得心がいった。
そして次の瞬間、俺はサッカーグラウンドの前に立っていた。衣装もいつものウェアにいつものグローブに替わっている。ご丁寧にも、いつものキャップまでが用意されていた。 「PK3本だ。俺が勝ったら、お前の魂を貰う」 瞬間移動させ、魔力を証明したせいだろう、さらに強気で三本の指を突き出しながら宣告する悪魔を、不機嫌な顔で睨みつけてやる。 「ふざけるな。どうしてそんな賭け受けられるか」 「何だ、怖じけづいたか?」 「違う!俺が勝った時の条件は、と聞いている!!」 冷笑を浮かべかけた悪魔の言葉を遮り、大声で叫んだ。 故国とは違い、この国では主張することが大事だ。 だが、時折そんな故国が懐かしくなるのも事実だった。 「何がいいんだ?」 話の腰を折られた悪魔は呆れたように、俺を見た。見慣れた青い目に、芽生えたばかりの郷愁が刺激される。 「日本人の美人」 俺はおそらく寝ぼけていたに違いない。何故そんなことを思いついたのか。
俺は誰も愛したことはない。何一つ不自由したこともないし、何も欲しいものはなかった。自分が不幸だと思ったことはないが、幸福だと思ったこともなかった。 「いいだろう。行くぞ!ファイアー!」 火柱が上がるかと思った。空気を切り裂く音が聞こえるかのようなシュートは、俺の横を掠めて、ゴールに突き刺さった。 「見たか!」 勝ち誇る悪魔ごと、冷静に観察した。軸足は左。利き足は右。体のバランスは良いが、ボール自体の回転は単調。
2本目、3本目は計算通り連取した。 「くそっ!」 悪魔は本当に悔しそうだったが、俺を見ると冷静に握手を求めて来た。その手を握り、悪魔と目を合わせた。 「賞品は?」 勝者の当然の権利だ。悪魔は苦々しそうに顔をゆがめて見せた。 「安心しろ。用意はしてある。ピエールから貰ったばかりなんだがな。身寄りがなくて、きれいな顔をしている」 「へえ・・」 シュナイダーの表情から察して、相当な戦利品だと分かった。 「ただ、蘇生させてから日が経っていない。あと1ヶ月はSEX禁止だ」 「なにィ!」 そこが一番大事じゃないのか!?悪魔は睨みつける俺を無視して、マントを翻した。 「まあ、せいぜいがんばれよ」 悪魔の哄笑がこだまする中、気がつくと俺はパジャマ姿で、自分の寝室にいた。そして、眠る前とは違い、ベッドの上には静かに横たわる人間がいた。
(つづく)
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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