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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
Geil Faust(1)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

夜中、異様な気配で目が覚めた。

 闇の中目を凝らすと、黒い影をまとい、金髪の男が立っていた。
「ハンブルクのワカバヤシだな?」
「ああ」
夜中に、部屋に不審な奴がいるのは気になったが、聞かれたことには間違いなかったので、とりあえず返事をした。
 ハンブルクに来て、チームの正GKに上り詰め、今やヨーロッパNo.1キーパーの呼び声も高い俺だ。夜中に黒づくめのストーカー位そう不思議でもない。幸い腕には自信がある。目の前の男も体格は良いが、そう簡単には負けはしない。
「何の用だ?警察を呼ぼうか?」
「・・・驚いたな。この大悪魔シュナイダー様を前に、少しも動じないとはな」
黒づくめ 男が黒いマントを捌く。再び翻した後には、金髪をかきわけるように、象徴的な長い角が聳えていた。
 手品師のストーカーでなければ、夢に違いない。呆れてケットを被ろうとした俺に、自称悪魔が立ちはだかった。長い指を突き出し、尊大な表情で睨みつけている。
「俺と勝負しろ」
「はあ?」
呼ぶのは警察ではなく、病院だったか。携帯を取り出しかけた俺に、自称悪魔が手を振る。虚空からその空間に姿を現したのは、サッカーボールだった。

 神も悪魔も信じない俺だが、目の前でボールを出現させられたら、少しは信じないわけにはいかなかった。悪魔は呆然とする俺の前でボールを軽く放り上げ、そのまま膝に流した。
 確かに、なかなかの腕前だ。こうして挑戦してくるのも、得心がいった。

 そして次の瞬間、俺はサッカーグラウンドの前に立っていた。衣装もいつものウェアにいつものグローブに替わっている。ご丁寧にも、いつものキャップまでが用意されていた。
「PK3本だ。俺が勝ったら、お前の魂を貰う」
瞬間移動させ、魔力を証明したせいだろう、さらに強気で三本の指を突き出しながら宣告する悪魔を、不機嫌な顔で睨みつけてやる。
「ふざけるな。どうしてそんな賭け受けられるか」
「何だ、怖じけづいたか?」
「違う!俺が勝った時の条件は、と聞いている!!」
冷笑を浮かべかけた悪魔の言葉を遮り、大声で叫んだ。
 故国とは違い、この国では主張することが大事だ。
 だが、時折そんな故国が懐かしくなるのも事実だった。
「何がいいんだ?」
話の腰を折られた悪魔は呆れたように、俺を見た。見慣れた青い目に、芽生えたばかりの郷愁が刺激される。
「日本人の美人」
 俺はおそらく寝ぼけていたに違いない。何故そんなことを思いついたのか。

 俺は誰も愛したことはない。何一つ不自由したこともないし、何も欲しいものはなかった。自分が不幸だと思ったことはないが、幸福だと思ったこともなかった。
「いいだろう。行くぞ!ファイアー!」
火柱が上がるかと思った。空気を切り裂く音が聞こえるかのようなシュートは、俺の横を掠めて、ゴールに突き刺さった。
「見たか!」
勝ち誇る悪魔ごと、冷静に観察した。軸足は左。利き足は右。体のバランスは良いが、ボール自体の回転は単調。

 2本目、3本目は計算通り連取した。
「くそっ!」
悪魔は本当に悔しそうだったが、俺を見ると冷静に握手を求めて来た。その手を握り、悪魔と目を合わせた。
「賞品は?」
勝者の当然の権利だ。悪魔は苦々しそうに顔をゆがめて見せた。
「安心しろ。用意はしてある。ピエールから貰ったばかりなんだがな。身寄りがなくて、きれいな顔をしている」
「へえ・・」
シュナイダーの表情から察して、相当な戦利品だと分かった。
「ただ、蘇生させてから日が経っていない。あと1ヶ月はSEX禁止だ」
「なにィ!」
そこが一番大事じゃないのか!?悪魔は睨みつける俺を無視して、マントを翻した。
「まあ、せいぜいがんばれよ」
悪魔の哄笑がこだまする中、気がつくと俺はパジャマ姿で、自分の寝室にいた。そして、眠る前とは違い、ベッドの上には静かに横たわる人間がいた。

(つづく)
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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