※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 キーパーになって、最初のセービングのことは忘れない。
最初は、当たり前にストライカーを目指した。どうしても目立つ役だし、かっこいいと思っていたのだ。そして、みんなそうだった。一見華やかに見えるFWやMFに人気が集まり、力関係でポジションが決まった。
でも、何度か試合をしてみて、気付いた。
キーパーさえ点を入れられなければ、負けることはない。
ちょうどその頃、テレビで見た試合でもそうだった。キーパーはバックスに指示を出し、ゴールキックでは、誰にボールを託すかが、試合の趨勢を決する。キーパーの判断というのは大きい。
そう考え出すと、気になって仕方なかった。サッカーの本を買いあさり、片っ端から読んだ。他のポジションとは違い、GKは後ろから全体を見渡すことができる。守備の砦であり、攻撃の要である。だから、高い資質が要求される、とあった。
それから、俺の秘密特訓が始まった。 いきなりポジションチェンジして、恥をかくのは真っ平だった。だから、家にグラウンドを造ってもらい、家の者達と練習をした。
キーパーに志願した俺に、周囲は奇異の眼を向けた。キーパーにあまり乗り気でなかった森崎は喜んでいたが、得点力のある俺のポジションチェンジには、監督すらも難色を示した。
だが、試合になると俺の意見が正しかったことが証明された。
GKに求められるもの。体格、パワー、判断力、俊敏さ、堅実さ、動態視力、恐れないこと。
相手チームが最初にシュートしてきたのは、開始10分後。左隅を狙って放たれたシュートは耳の横を掠めていく。パスとは違うスピードに、空気の切れる音がする。だが、恐れずに目を見開く。見えた。キャッチした。
一瞬の静寂の後、歓声が上がった。チームメイトが、跳び上がって喜んでいた。
・・・ばかやろう。いちいち喜ぶなよ。試合はまだ始まったばかりなんだぞ。
ロングキックで、センター下の井沢にパスした。井沢が滝にパスした後、滝が得意のドリブルで走り抜け、ゴール前に送る。井沢が上げたセンタリングに、来生が走り込む。先取点は修哲だった。
「若林さんっ若林さんっ」 試合が終わった後、みんなが走り寄って来た。みんな興奮しているのが分かる。・・・俺もそうだった。来生が、俺の名前を呼ぶのが聞こえているのに、どこか夢うつつだった。 初めてキャッチしたボールの感触は、まだ手の中に残っているようだった。
きっかけは何だったか、岬と「初めての話」になった。俺の話を、岬は真剣に聞いた。 「・・・なるほどね。でも、翼くんや僕にはそういう発想はなかったよ」 翼や岬の場合、体格的なこともあるが(二人ともスイーパーとしての腕はある)、何より一人で練習することが多かったという。試合中孤立の存在であるGKは、他の人間なしでは練習できない。 「でも、僕も初めて決めたシュートのことは覚えているよ。確か・・・鹿児島」 岬の言葉に、笑いが込み上げる。本当に日本中を股にかけているらしい。サッカーに神様というものがいるのなら、そんな岬や翼を、俺の元に送り込んでくれたことを、心から感謝する。 「俺も初めて好きになった相手は忘れないぜ。・・・今もここにいるけど」 顔を見合わせて、笑い合う。腕の中にあるのは至福の感触。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 最後の方が蛇足感たっぷりに。こちらの方を先に書いたんですが。気がついたら、こんなことに?? 今日の話は2冊の本を読まなければ、こんなには膨らみませんでした。 『GK論』これは、通りすがりの古本屋の100円コーナーにて。まさに私に買われる為に鎮座していたのだと思いました。 『1/11』サッカーマンガ。主人公が松山くんっぽい、いい話マンガです。最近一番楽しみにしているサッカーマンガ。 その割にしょうもないのは、自分のせいです。はい。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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