※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 今日で終わりです。 3
ラーメン屋はあまりきれいな店ではなかったが、安くてうまかった。岬が言うだけのことはある。カウンターで二人して熱いラーメンをすすりながら、ぽつぽつ話をする。 もう、昔のままではないのだ。そう思うのに、岬は不思議なほど昔のままで、俺は時々心配になる。かと言って、松山ではないし、思い出話に花を咲かせるまでもない。だから、こうしてお互いメシを腹一杯食って、元気なのを確かめるのが一番性には合っている気がする。 「それで、お前友達はいるのかよ」 「うん、サッカー部とイコールなところあるけど」 「まあ、俺も似たようなもんだ」 ひとしきり二人で笑う。 それから、岬を見た。目の前にいるのは、相変わらず寂しがりのくせに、意地っ張りで、強がってばかりいる奴。そして、自分の弱みを見せないようにする奴。 目の前では笑ってみせてはいても、必ずしもその通りだとは限らない。 「お前、どうして日本に帰って来た?」 あのままフランスにいれば、きっとプロになっていただろう。見上監督も片桐さんもそんな話をしていた。当然、俺もそうするとばかり思っていた。 「翼に勝つつもりだったのか?」 翼の影、に。俺にしか言えないことだった。南葛のメンバーと、岬。翼と直接戦えない代わりに、俺と戦うつもりなのか? 「・・・それもあったけど」 岬は小さくため息をついてみせる。 「それよりは、子供に戻りたかったのかも」 子供、と言われて南葛を思い出した。 南葛の岬、に会った時、驚いた。岬はサッカーは上手い分、技巧的にしていたところがある。その岬があんなに無邪気にボールを追うものか、と意外だった。 「僕だって、またみんなと走りたかったんだよ」
ラーメン屋を出て、岬の家に向かった。そう長く話していたつもりもなかったが、時間はあっという間に過ぎた。 「もう遅いし、泊まって行く?」 「ああ。そうさせてもらう」 岬の隣の布団で横になる。まるで、あの夜だと思った。 「昔のこと、思い出すよ」 岬は顔だけをこちらに向けると、切り出した。 「そうだな。あの時、お前ちゃんと寝られたか?」 尊と勝にはさまれては、俺でも夜中に目を覚ますくらいだ。 「ううん。あの時、小次郎にどう言おうか、迷ってた」 数日後に、何も言わずにいなくなった岬を、本当は探しに行ってやりたいと思った。俺の家の兄弟にしてしまえたら、岬も俺もどんなに楽しかっただろう。 「また、いつか兄弟になりに行くよ」 「お前、直子は狙うなよ」 「それ、良いかも。でも、小次郎おにいちゃんって言うのしゃくだよね」 バカな話をしながら、岬は目を閉じる。言葉と言葉の合間に、岬の辛い気持ちがにじみ出るようだった。
岬の話は、すべて納得がいく訳ではない。理解しがたいところもある。それでも、疲れが出たのか、俺はすぐに眠りに落ちた。
その日は、岬が俺達の兄弟になっている夢を見た。名前と誕生日の関係で、岬が「太郎おにいちゃん」だったのだけはがっかりした。
(おわり)
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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