※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 今日は小次&岬です。(小次×岬ではありません) 1
「キャプテン、どこ行くんですか?」 「・・・若島津、俺はキャプテンじゃねえだろ」 いつもの通りに不毛なやりとりを交わし、そのまま出て行こうとしたら、若島津に後ろ髪を掴まれた。 「ってぇだろうが、何しやがる」 「それでどこ行くんです?」 こうなった時の若島津は手に負えない。仕方なく、他の奴らに見つからないように耳打ちする。 「偵察だ」 「ああ・・・」 若島津は俺の一言ですべてを察した顔をした。さすがに侮れない。
今日は、静岡の県予選。去年の優勝校である東邦はシードだが、南葛高は高校リーグでは全く無名の存在である。だが、南葛中学の優勝メンバーを中核にしたチームは、今大会の台風の目になるだろう、とは反町の受け売りだ。 そのチームの中心にいるのは、岬。昔のチームメイトだ。
岬とは、小学生時代に2度対戦した。だが、どうも憎む気にはならないのは、奴が明和小学校に転校して来た時の付き合い方のせいだろう。 お互い片親で、苦労していたこともあって、何度かの反目の後、俺達は親しくなった。友達、というよりは、俺にとってはあいつは兄弟みたいなもんだった。おかずの交換をしながら、さりげなく飯を食っていくところなんかも憎めなかったし、尊達も懐いていた。 なにより、岬とサッカーをしていると、面白かった。 「サッカーって楽しいよね」 「俺のサッカーはそんなに甘くないぞ」 「ふ?ん、じゃあ、僕のボール取ってみてよ」 ボールが足に吸い付きでもしたように、岬はくるくるとキープする。力では俺の方が上のはずなのに、岬のボールは奪えなかった。 「あはは、小次郎、必死だね」 「うるさいっ、ちょろちょろするな!」 からかわれながらも、必死で追いかける。若島津に「闘牛ごっこ」と名づけられた有様だったが、とても楽しかった。 楽しくて、雨が降り出したのにも気付かなかったくらいだ。 「岬、家に寄って行け」 「うん」 とても家まで帰れそうにないから、母ちゃんと泊まるように勧めた。ちょうど岬の親父が留守だったらしく、岬は俺の家に泊まることになった。 「ぼくも岬おにいちゃんとお風呂入るー」 勝がうるさいので、岬も尊も一緒に風呂に入った。 「勝くん、ちゃんと浸かって。ほら、1、2・・・」 岬が勝を浸からせて、数を数えてやっている。その間に尊の頭を洗ってやり・・・岬はにこにこしていたし、普段はちゃんと湯船に浸からない勝もしっかり言う事を聞いていた。何だか、妙にうれしかった。 「良いね、小次郎ん家は」 髪を拭きながら、岬が呟く。同じ飯を食って、同じ風呂に入った。岬はごく自然に俺の家に馴染んでいた。 「可愛いだろ、あいつら」 岬は静かに頷く。意地っ張りなところもあるが、こんな時の岬は妙に素直で、こっちが面食らってしまう。 「うん・・・僕も君の兄弟だったら、って思うよ」 岬の声は普段と同じ高さなのに、大きな声で怒鳴られる方が堪える、と思った。静かな声が痛々しくて、岬の手を引っ張った。 「お前一人の時は、うちに来い。分かったな」 「うん、そうするよ」 岬は笑顔で頷きはしたものの。
その約束は守られることはなかった。岬はまもなく転校し、やがて俺の敵として、目の前に現れた。 岬が敵、というのはすぐには実感が湧かなかった。隣の布団で、尊や勝に挟まれながら、眠っていたことの方が心に残っていた。まるで、遠くに離れたもう一人の弟だと思った。
(つづく)
拍手ありがとうございます。 今日は一部の地域が大変だったようです。そちらの地方にお住まいの方々が、どうかご無事でありますように。
以下、拍手お礼: さくら様、いつもありがとうございます。 しりとりとか、あの手のを考えるのが好きなだけで、うちはむしろイロモノですから。身にあまる賛辞に、こちらが舞い上がりそうです。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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