※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「若林くん、岬くん知らない?」 翼の言葉に、ゆっくりと首を振る。
嘘だ。本当は、ここで岬を待っている。もうすぐ、ここに来る約束になっていた。
「そうなんだ?若林くんに聞けば分かると思ったのに」 翼の一言が引っ掛かった。何も言わずに、翼を見下ろす。 翼は視線を逸らさずに俺を見上げた。その顔はもう笑ってはいない。岬に対する時とは、随分違う。 「若林くんってずるいよね」 訳が分からない。翼は俺を睨みつけ、にこりともせずに続ける。 「みんな岬くんが好きでも、我慢してたのにさ。ちょっとヨーロッパで一緒だったからって、さっさと掻っ攫っちゃうし」 確かに、岬はアイドルに近い存在だった。でも、それは小学生の頃の話だし、掻っ攫ったと言っても、14の俺がどんなに我慢強く頑張ったのか、お前は知るまい? 「俺なんて、岬くんの居場所も知らなかったのに」 おいおい、それは俺のせいじゃないだろう?どちらかと言えば、連絡を取らない岬のせい、それをさせられなくした岬の親父さんのせいだ。 「なのに、若林くんには会いに行っちゃうしさ」 翼は、岬には何も言わない。ただ、側にいてほしいのだと思っていた。だから、翼がそこまで岬に関心があったことの方が驚きだ。 「お前、彼女いるくせに、よく言うよな」 彼女、どころか結婚すら近いと言われている。留学やら挟んだ割に、見事である。 「岬くんは、誰のものにもならないと思ってたんだよ」 ぽつり、と翼が呟いた。翼らしからぬ静かな表情に、拍子抜けさえする。 「それが、よりによって若林くんに捕まるなんて。文句の一つも言いたくなるよ」 確かに、それはそうかも知れない。岬は恋愛自体を避ける傾向があった。 でも捕まえてやろうと、心に決めたのは、11歳の時。すぐに運命の相手だと分かったのだ。 「大事にしろよ」 「当たり前だ」 怒鳴り気味に言い返す。わざわざ翼に言ってもらうまでもない。俺自身よりも大切な宝物を、傷つけたりはしない。 「・・・そう、分かった。じゃあね」 翼はあっさりと手を振ったが、何とも複雑な顔をしていた。この件に関しては、お前に限らず、誰にも負ける訳にはいかないから、とその表情を見なかったことにする。
しばらくして、岬が姿を現した。南葛高の連中と一緒だったとかで、巻くのに苦労したらしい。 「さっき、翼が探してたぞ」 「そう?」 「けど、もう良いらしい」 翼が俺達のことを知っていると分かったら、岬はどんな顔をするだろう?見たい気もするが、その気持ちも封印する。何も知る必要はない。
翼はきっと、お前には何も言わないから。
お前を守るのは俺の役目。気持ちを切り替えて、岬の背中に手をまわした。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 ワールドユース編設定で。 10日らしくと思ったのですが、翼くんを書くと、何だか大人になります。翼くんを翼くんらしく書く、のはまだ無理そうです。 (けとばしマンの時は、ちゃんとちょーちょー結びの翼くんのはず!)
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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