※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 昨日の続きです。 2
「若島津、ちょっと良い?」 「ああ」 練習が終わり、若島津が引き上げようとする途上に、岬が待っていた。
岬の非友好的な笑みを最もよく知るのは自分だと若島津は思っている。穏やかとは言えない賑やか過ぎる日々を過ごした明和小時代、全国大会、そして高校時代。殺気まで含む視線に、懐かしさまで覚える。 「言われなくても、分かってるよね?」 今更笑顔を浮かべても、と日向さんじゃないんだから、騙されないぞ。静かに視線を返して、若島津は口を開く。 「言っておくが、俺はお前程趣味悪くはないからな。第一、気になるなら、放っておくなよ」 こうして、不穏当な表情を浮かべていても、岬はきれいだと若島津は思う。大変な目に遭いながらも、微笑むことのできる強さは、岬を輝かせている。いつもいつも笑っていてくれれば、なお有り難いのだが。 「そうじゃなくて・・・あんまり手を貸しちゃ後悔するよ。君って義理堅いんだから」 「・・・どういう意味だ、それは。まあ、あれが湿っぽいのも鬱陶しいからな。もう少し仲良くしろ」 「分かった」 岬がため息をついたのが聞こえた。岬の反応に首をかしげながら、倉庫の陰を出た若島津は、待っていた若林に気付いた。せっかく話をしてやっても、当の本人がしゃしゃり出たら意味がないだろう。岬の言下にこめられた意味が分かった気がして、若島津は顔をしかめる。 「・・・早く行け!」 背中を押す、というよりも突き飛ばす。若島津の常人ばなれした力に、さしもの若林さえ、よろめく。 「何だか、悪かったな」 「とらやのようかん」 手を差し出し、異国の人の、滅多に口に入らない好物を言う。若林は軽く頷いて、倉庫裏に消えた。
「・・覗いてたの?」 若林が来たのを察した岬が声をかける。岬の表情は見えない程暗いのに、自分だと気付かれたらしいと若林は苦笑する。 「気になるからな。話し合いは終わったか?」 「若島津にまで心配かけちゃ駄目だよ・・・。さ、戻ろ」 若島津が頼りになることは若林が一番よく知っていると言っても過言ではない。実力も人望もある選手は貴重な世界だ。 その若島津をもってしても、岬の気が変わることはないと踏んでいたのだ。だが、予想外に岬の声は優しい。安心した若林が踵を返そうとした時だった。 「!」 かたん、微かな物音がした。若林は慌てて駆け寄り、少し明るい所まで岬を引っ張る。つまずいたらしい岬を助け起こす。 「岬、どうした!?」 若林が、ごく自然に自分を抱き上げるのを、岬は呆れて見ていた。自分達は、微妙な状態ではなかったか。 「急に動くから・・・打ってないか?」 「つまずいただけ・・ちょっと、若林くんっ!」 躊躇なく、抱き上げられた岬が、焦るのも無理はない。可愛い顔はしていても、岬は背が低い方ではない。然るべき筋肉だって付いている。 そして、プライドはもっと高い。お姫様抱っこの状態で、宿舎に運ばれるのには耐えられなかった。 「若林くん、大丈夫だから、下ろしてっ」 若林の首に腕をまわして、岬が囁く。岬の意に反して、定石通りの姿なのは、そうしなければ高さがあるため、危険だからだが、若林の意見は異なる。 普段は触れることも難しい岬が、ぴったりと密着していている。岬の体温も鼓動も息遣いも、すべて伝わって来てしまう。いっそ、このまま、さらってしまいたくなる程。 だが、そうはいかない理由があった。 「三杉!済まないが、救急箱を・・」 「要らない、要らないから下ろして・・」 先に戻っていた若島津には、岬の言葉の意味がようやくはっきりと分かった。確かに、暴走したあいつときたら・・・若島津は岬に同情し、心の平安の為に祈った。
望まないこととはいえ、かすり傷なのにお姫様抱っこで運ばれた上、大声で騒がれては、今までいくら岬が若林を避けていようとも、無効に等しい。
「何や、心配して損したわ」 とは、新田との賭けに負けた早田の負け惜しみである。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 1年以上書いていた話です。発端だけ作って、他の話とかぶったので、放置。 ある日、突然若島津くんが頭に浮かんで、何とか終了。いつもは若島津くん書けなくて困ってるのに・・・。 バカ話ですみません。
以下、拍手お礼: ゆかり様、コメントありがとうございます。 元明和小の仲間は、仲が良いけれど悪友、だと勝手に決め付けています。 若島津くん呼び捨ての岬くんって意外と・・・と想像するだけで楽しいです♪ うまく伝わると良いのですけれど。
さくら様、いつもありがとうございます。 タイトルはあまり考えずにつけたのですが、妙にはまってしまって、おかしいです。 今日は久しぶりに勢いで押してみました。若島津くんばっかり目立ったような。 それより、変なことで悩ませてしまって、本当にすみません。
拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
スポンサーサイト
テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
|