※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「岬は若林と仲悪いんか?」 早田の言葉に、うっかり話しかけられてしまった三杉は、明らかに顔を引きつらせていた。U-22合宿に途中参加した若林を、持ち前の好奇心で観察していた早田である。 「早田くん、急にどうしたんだい?」 とりあえず、表情だけはいつも通りの平常に戻し、三杉は早田を振り返った。 「昔は出来てるって噂もあったのに、全然話もせえへんやろ?」 その噂をふりまいていたのも君だろう、と心の中で呟いて、三杉は首だけ動かして頷いた。 「飯も絶対別やし、目ぇ合わさへんし」 それだけ聞くと本当に悲惨だけれど…と事情をよく分かっている三杉は、すぐ近くを歩いていた若島津に目配せをした。同じく事情を理解している若島津もため息をついた。
言うまでもなく、若林と岬はつきあっていた。 しかし、岬は人目を気にする。若林が堂々と岬は自分のものだと触れて廻りたいのに対し、岬はそうではない。 「君は気にしないかも知れないけど…噂が立って、君をよく知っている人から心配されたらどうするつもり?」 静かな口調に、思慮深い表情で岬は若林に問う。若林にも、岬の言うことも分からないでもない。日本よりずっと進んだドイツでも、そういう諍いがなかった訳ではない。
「でも、なあ」
いつでも自分の恋人だと公言しておかねば、老若男女問わず愛される恋人を持った若林は心配でならない。
「とにかく、合宿中は僕に必要以上に話しかけないで」
無情にも岬は言い切った。 オリンピック代表合宿に途中から合流した。チームの監督との衝突から、試合に出ることも叶わない若林にとって、チームを細い双肩に背負い、オリンピック予選に臨む岬を助けてやれることは嬉しくて、用意された戦場に喜びさえ覚えた。
ところが、当の岬が話しかけないで、と来た。
「何だ、その仏頂面は」 若島津との不穏当な日常会話すら、若林には腹立ちの種だ。 「五月蝿い」 いつもは、夢にしか逢えないほど遠い。常に視界に岬がいる、というのは若林にとっては、信じられないような幸福であるはずなのだ。 それが、近づくのが許されるのは、人目を忍んでの自主トレと休暇の時のみとなれば、若林の気持ちも収まらない。 「お前の気持ちも分からんではないが・・・」 普段は夢見ることしか出来ない相手が、すぐ近くにいる。微笑んで、話して、走って。 「でも、お前の血走ってる目を見ると、向こうが正論だな」 「わ?か?しまづ?」 若林の憤慨をよそに、若島津はグラウンドに目を遣る。岬が色々なものに耐えているのは、傍目でも分かった。 もう少し楽にすれば、と周囲は言うが、それが難しい人種がいるのも、若島津はよく知っている。 「じゃあ、今夜、段取りしてやるから」 「本当か?」 「ああ」 感謝はしているのだろうが、若林に抱擁されると、恩をあだで返された気分になった若島津である。まあ、岬には世話になっているからな、と前を見て、岬の視線に気付いた。
(つづく)
拍手ありがとうございます。 昨日も今日もバタバタで・・・。 つい長くなったので、続きます。
以下拍手お礼: さくら様、いつもありがとうございます。 昔の源岬は、それこそバカップルの象徴でしたよ。私が遠恋設定にしている分、甘えない、頼らない雰囲気になっていますが…。(あと私が理屈っぽいせいもあります。おそらく) 今日は少しノリを軽くしてみました。
拍手連載と「援軍」へのコメント下さった方、ありがとうございました。若林くんだけの話だと辛いので、岬くんの高校時代を想像してみましたが・・・原作で触れられなかった部分なので、興味深いです。ワールドユース編の日向くんと岬くんの仲の良さからして、試合以外は仲良くしていた、と思いたいです。
拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
スポンサーサイト
テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
|