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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
子供の領分
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

 電車が揺れる。窓の外を眺めるふりをして、隣を見る。
 視線を感じたのか、岬がこちらを振り返る。


 全国大会の帰り道は、途中から合流した俺も同じ電車に乗った。
 翼が、ロベルトを追うらしく、別行動になったこともあり、俺は岬の隣に座った。

「足、大丈夫か?」
「うん、若林くんは?」
「俺も平気」
それまでは、ほとんど話したことがなかった。澄んだ、甘い声を、岬のものとして聞く。
「気をつけて帰らないとね」
自分に向けられる笑顔も、新鮮だった。学校が違う上、翼がベッタリだから、岬とまともに顔を合わすのも初めてだった。

 すごく奇妙な気分だ。

 ほとんど話したことも、まともに接点もなかったチームメイトが、こんなに気になっていたなんて。

 確かに、見たことがない位可愛い。こうして話しているだけでも、落ち着かない。

 だが、落ち着かないのは、それだけではない。岬を見ていると、何故か苛立つような感情が、沸き上がってくる。

「ああ、そうだな」
俺の相槌に、岬は微笑んで、背もたれにもたれた。

 腕組みをしたまま背もたれに体を沈めて、隣の岬を見ると、岬は窓の外を見ていた。

「もうすぐ、転校するんだって?」
口を開いたのは俺の方だった。岬は頷き、俺を見上げた。
「うん。だから、このチームで最後まで戦えて、嬉しかった」
笑顔で答えた岬に、心に爪を立てられた気分になった。

 嘘だ。

 直感した。

 翼と走る岬を知っている。この上なく幸せそうな顔をして、走る岬をいつも見ていた。

 こうして話す時の岬の表情は、どこか大人びていて、可愛いのに、何故か見ていられない。
 サッカーをしている時だけ、岬は子供でいられるのだ。俺がそうであるように。

「まだ走り足りないんだろ?」
ひどく驚いた顔で、岬は俺を見返した。おそらく、俺でなければ、岬の嘘は読み取れなかったに違いない。笑顔なのに、辛そうだとは普通は思わない。
「無理するなよ」
思わず岬の手を握った。俺の手で包んでしまえる、小さな手は震えていた。
「そんなことないよ」
それを言葉通り信じるほど、俺は子供ではないが、岬を泣かせるのは本意ではなかった。
「そうか」
そのまま、俺は岬の肩を抱いた。

 この電車が着いたら、この時間は終わる。岬は南葛からいなくなる。

「岬」
「なに?」
「(行くなよ)」
「え?何?聞こえないよ」
「何でもない」

 言えない言葉を、飲み込む。結果の分かっているが言えるほど、俺は子供ではない。

 それなのに、胸が痛くて仕方がなかった。

 この電車が、教科書で習った話のように、それこそ空に舞い上がって、銀河を走る電車になって、この時間が終わらなければ。

 俺らしくない、馬鹿げた空想だった。現実には、こんな小さい奴一人さらえないのに。

「また会いに来いよ」
「・・・うん」
意外そうな表情で、岬は俺を見返す。俺だって、自分でも意外ではあるが。
 ただ、今の俺に許された精一杯の言葉だった。岬は小さく頷き、下を向いた。
 その姿は驚くほど小さく見えて、胸が締め付けられそうだった。

 もし、また会えたら、俺はお前を抱きしめるんだろうな。

 そんな予感がした。

(おわり)

小学生編の別れ際の気持ちで。
源岬は、似た者同士だから、出逢ってしまったのだと思っています。うまくは書けませんが。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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