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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
援軍
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

「どうした?」
急にかかってきた電話に、驚く。岬からの電話は本当に珍しい。

「こんにちは。突然ごめんね」
電話の向こうから聞こえる声を聞くだけで、心が弾む。
「あのね・・・よそのチームで、負けたキーパーが家まで歩いて帰った話を聞いて・・・」
「俺を思い出したのか?」
岬の無言は肯定に他ならない。


 確かに、昔、俺が点を取られたばっかりに負けて、家まで走って帰ったことがあった。
 他の奴らに慰められるのも癪で、走って帰ったのだが、家に帰ると何故か岬がいて、穏やかに笑っていた。
「こんにちは、若林くん。ご飯、何が良い?」
前に渡した合い鍵で入ったらしい。とりあえず冷蔵庫の中身を思い出して、肉じゃが、と答えた。
 岬はそれから肉じゃがを作ってくれ、飯とみそ汁を用意してくれた。その間、俺はその日のことを思い出しながら、ぼんやりと岬の手際を眺めていた。
 岬の肉じゃがは旨かった。みそ汁は少し味が濃かったが、疲れている時にはちょうど良かった。
「旨いぜ」
「良かった」
そう言いながら、岬は何も聞かない。屈辱的敗北を知らない訳もないのに、ニコニコ笑って、俺が食べるのを見ている。
「岬」
「なあに?おかわり?」
「まだ食わす気か?」
吹き出さずにはいられなかった。岬は澄ました顔で、俺を見ている。
「元気出た?」
「まあまあかな」
とにかく、食べないと元気が出ない。何度か俺が岬に言った台詞だ。それを実行させられては、認めない訳にはいかない。
「ぶざまな試合だったろ?」
「ううん」
岬は小さく首を振る。試合が終わって、すぐ来てくれたのは確からしい。
 テーブルを挟んで話していた岬の肩を抱いて、ソファーに誘導した。岬はエプロンをしたまま、俺の隣に座る。その細い肩に、頭を預けた。
「なあ、岬。楽しいだけじゃ駄目なのか?」
俺達が敗れたチームは、バイエルン・ミュンヘン。かつてのチームメイトのシュナイダーのチームだ。シュナイダーと対戦するのは、カルツにとっても俺にとっても、楽しいことではない。まして試合は、最低の展開だった。

「僕はプロに所属したことはないから」
前置きして、岬は俺を見た。肩に乗せたままの俺の頭を、軽く撫でてくれる。
「楽しいだけじゃないって教えてくれたのは君だった。でも、その苦しさを越えたところに喜びがあるんだっていうのも、君から聞いたよ」
岬の手は優しい。それよりも、こうして駆け付けてくれたことの方が嬉しいと思った。
 撫でてくれる手を握る。
「もしかして、落ち込んでると思ったのか?」
「・・・そりゃあ、まあ」
なんて言葉を濁しながら、岬は笑う。
「小次郎に、何年も何年も睨まれたんだよ。転校して勝手に敵になったって」
「ははは」
「僕は、あの時小次郎に会えて嬉しかったのにさ」
小学生時代の南葛と明和、その後も岬と日向は高校サッカーで毎年死闘を繰り広げた。なのに、試合のない日には、二人でラーメンやおでんを食べに行っていたそうだ。
「それでも、未だに小学生の時のことを言われるよ」
日向と岬は仲が良い。俺が嫉妬する程だ。だから、対戦する時には、ものすごく覚悟していたのだと岬は言った。
「だから、勝っても負けても、ダメージあると思ってた」
岬は静かに微笑んだ。普段は呼んでもなかなか来ないくせに、人の弱っている時を狙って来たりする。
「岬っ!」
「わあっ!!」
俺に飛びつかれて、岬が悲鳴をあげる。捕まえた岬をそのまま、抱きしめた。

 こういう援軍なら、いつでも大歓迎だと思った。顔は見られないように、岬を抱き込んでしまうけれど。


 岬が、その時の話を思い出したのは間違いなかった。
 今はそんなことないぞ、言っても効果はないかも知れない。
 だから、
「救援待ってるぞ」
そう囁いた。


(おわり)

拍手ありがとうございます。
最近の実話(某チームのキーパーさんが責任感じて徒歩で帰宅)とRoad To時のミックスで。
日向くんと岬くんは、大会中、普通に一緒にご飯を食べていそうだな、と。(岬くんは松山くんとも普通にご飯を食べるだろうし)そういう意味では、若林くんの方が繊細そうなので。

明日から、拍手(WEB拍手じゃない方。PCだと三杉様拍手)で、連載やります。もし、岬くんが日本に帰国しなかったら、というIFもので、好みが分かれそうなので、拍手でこっそりと。
急遽決めたので、今の電車ネタは明日の更新時まで。携帯からは一応リンク作ります。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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