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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
目が覚めたら
※二次創作です。女性向け表現を含みます。苦手な方はご注意下さい。

十年後


「岬さん」
呼びかけても、起きる様子はなかった。本当に疲れているらしい。起こさぬように配慮しながら、岬の顔の近くまで移動した。

 二年の岬は、最近この学校に転校してきた。元々の可愛さに加えて、柔らかい物腰と綺麗な微笑みで、今や男女問わずすごい人気を誇っている。
 つい先日までは、俺と翼だけのアイドルだったのに。とはいえ、同じ部に入ってくれたことだし、まだまだ機会はある。
 今日は、たまたま職員室で顔を合わせ、帰りの廊下で話していたら、顔色の悪いことに気付いた。表情も辛そうだ。
「岬さん、具合悪いなら保健室に行った方が良い」
「若林くん」
岬は遠慮がちに微笑んでいたが、やがて俺を見上げた。
「参ったな。ばれないようにと思ってたのに・・・悪いけど、連れて行ってもらっても良い?」
その辺の奴なら笑顔でごまかされるかも知れないが、俺は違うぞ。具合が悪いのなんてすぐに分かる。
「分かりました」
恭しく微笑んだ俺は、おもむろに岬を抱き上げた。
「ちょ、ちょっと」
戸惑うのも気にしない。確かに周囲も騒がしいが気にしない。姫の危機に駆け付けないのは騎士として、失格だ。そして、その危機に身を預けられるのは誇らしい。
 軽い身体を抱いて、保健室まで運ぶ。柔らかい抱き心地や良い匂いや、きれいな顔のアップなんかにすごくドキドキして、このままこの時間が続けば良いと思わないでもない。だが、一刻も早く楽にしてあげたい。

 保健医はあいにく席を外していた。
「横になった方が良い」
俺の言葉に岬は素直に頷いた。制服の上着を脱ぎ、カッター姿になると、ベッドに横になった。
 着替えは見慣れてはいるが、学ランを脱ぐ時のしどけない仕種や、首や襟足のはっきりするカッター姿や、腰の細さが際立つ無防備な服装に、思わず視線を外してしまう。あの身体をさっきまで抱いていたかと思うと、改めて胸に、きた。
「あ、眼鏡外さないと」
岬はそう言うと、眼鏡を外した。クラブ以外ではかけているらしいが、目の前で目を閉じられるのは、心臓に悪い。近い。
「岬さん、とりあえず寝てろよ。俺見張ってるから」
「でも・・・」
俺はベッド横の椅子に腰掛けて、腕を組むと、目を閉じて眠るふりをした。
「分かった。ごめんね」
岬は微笑み、目をつぶった。色が白い分、淡いピンクの唇と、黒いまつげの長さが引き立つ。
 きれいだ。
 横顔を見ているだけで、うっとりするくらい。だが、それだけではない。見ているだけで胸が熱くなるのは。
「岬さん」
もう寝てしまったらしい。アルバイトをしながら、自活をして、サッカー部も続けている。さっき抱き上げた時も、ひどく軽かった。
「岬さん」
そっと近付いた。起こさぬように接近して、寝顔に触れた。予想通り触り心地の良い頬だった。
「・・・ん」
岬は少し声をあげはしたものの、目を覚ます様子はなかった。
 知れば知るほど好きになる。昔の憧れではなくて、もっと切実に、抱きしめたくなる。助けたくなる。守りたくなる。昔の初恋なんて比べものにならない苦しさだ。
「あひ見ての後の心に比ぶれば昔はものを思はざりけり」
百人一首の一句を思い出す。恋がこんなに苦しいとは、知らなかった。
「目が覚めたら」
この気持ちを打ち明けよう。これ以上、切なくなる前に。

(おわり)

南葛高校サッカー部のある意味本編です。絵を描いたらどうしても書きたくなって。
いつも、書きたいシーンが心の中にあって、そのために設定を作ることが多いです。
大概そのシーンが変なのもご愛嬌。
更に、完成した話が当初の予定と大きく異なる場合だらけ。あれ?
本当に、こういう話になる予定だったんですってば。

from past log<2008.11.9>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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