※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 昨日の続きです。 2
岬の「荷物」は軽かった。予備のユニフォームやジャージ等、知れている。俺を連れ出す口実なのは一目瞭然だった。 岬は帰る道々、色々話してくれる。自分の実力を測って参加したこと、足手まといになるつもりはないこと。岬の言葉の端々に覚悟が滲む。
話している内に、岬のアパルトマンに着いた。時々スケッチ旅行に同行するらしいが、岬の通う日本語学校も、親父さんの通う美術館も近いので、定住記録を伸ばしつつあるらしい。 「ごめん、こっちに」 軽い荷物を置いて、ソファーに腰掛けた。岬は黙って俺の隣に座り、すぐ横まで近付いて来た。反対の立場だと嫌がるくせに。 「やっぱり、傷がある」 慌てて隠した俺の手を押さえて、岬は俺の顔を見た。 「もう治りかけだから、大丈・・」 俺の台詞を遮るように、岬の手が俺の頬に当てられた。 まっすぐな視線が俺にぶつけられる。甘そうな茶色の大きな目が俺を見つめる。 岬の言いたいことは分かっていた。今日の練習で、チームの連中を怒鳴る俺を、岬は何度も振り返った。 「そんなに僕は信用できない?」 岬の口調は、ぞっとするほど静かだった。岬は俺の傷を指でなぞる。 「そんなこと・・・」 言葉が途切れた。目の前の岬は黙ったまま、涙を落としていた。落ちるに任せた涙の粒が、膝にかかる度に、小さな音がした。 「信じてはいた。だが、俺は俺の役を・・・」 「そのために若林くんが辛い思いをするの?」 長い付き合いだが、岬が泣くのを見るのは初めてだった。岬はそのまま静かに涙を零した。
(つづく)
拍手ありがとうございます。 明日で終わります。
新しいカテゴリーを加えました。太古の昔の雑誌記事をテキスト化。(4はまだ終わっていませんが) 目次から行けるので、興味がある方はご覧になって下さい。(4もしないとな)
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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