※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 秋葉原はさすがに混んでいた。明るい声のメイド服の女性が、道行く男性に、チラシを配っているのも、この街では一般的な光景らしい。 「メイドカフェだって」 もの珍しいのか、笑顔で受け取った岬が、戦利品を見せてくれる。 「森崎くんが、おかえりなさいませって挨拶してくれるって言ってたよ。行く?」 「行かない」 一言答えて前を向く。それよりは、江戸前の寿司が食いたい。駅への道を辿る。だが。
「そうだよね、君の家って、メイドさんいたらしいもんね」 岬の言葉に、思わず足が止まった。 「何故、知ってる!?」 小学生の頃に、何故か家のハウスキーパーの制服がメイド服になったことがあった。若いねえやなんかは喜んでいたが、上の兄貴はそんなつもりはなかった、とか喚いていたな。 「高杉くんから聞いたよ。メイドさんが見たくて、わざわざ届け物持って行ったって」 あいつらは、いつも岬に何を吹き込んでいるんだ。次会った時には覚えておけ。記憶の手帳に書き込んで、弁解しようと岬を見た。 明るい陽射しの中、柔らかい表情の岬が隣を歩いている。そうか、これはデートなんだなと思った。日本にいる時は、手を繋いだりしない限り、同性同士で歩いても奇異に思われることはない。岬も楽しそうに、歩いてもいる。 「楽しいな」 「・・・若林くん、秋葉原好きなの?」 そういう訳でもないのだが・・・声を弾ませていることから察して、岬も楽しいのだろうと思う。だから、少し悪戯心が疼く。 「岬がああいう格好してくれたら良いなと思ってさ」 からかい半分だが、本心でもある。リアルメイドがいた経験からすると、岬なら、バッチリだと断言できる。似合いそうだな。恥ずかしがる様子も可愛いだろうな。 「何だよ、それ」 低く言って、岬は少し足を早めた。機嫌を損ねているつもりだろうが、そういう動作もいちいち可愛いと思う。
実のところ、笑っていても、怒っていても、岬が側にいてくれれば。
「でも、やっぱり岬にはおかえりって言ってほしいんだよな」
おかえりなさいませ、じゃなくて。 時々、岬がうちに来る。おかえり、と笑ってくれるだけで、柄にもなく感動する。その分帰ってしまった後は、何倍も寂しくなるのだが。
「そうだね。僕も時々そう思う」
岬は静かに微笑んで、歩き出した。まっすぐ歩く後ろ姿はそんな心細さなど、微塵も感じさせない。
相変わらずだな、お前も、俺も。
心を過ぎった感傷を振り払って、岬の後を追った。
(おわり)
拍手ありがとうございます。
さくら様がメイド話を振って来られたので、やっぱり書かないといけないかと思って。 どちらかと言えば、若林邸の謎シリーズですけれど。
あと、メイド岬さんは、*君影草*さまにいらっしゃいます。可愛いです。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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